著者
平野 郁子
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.132, pp.45-57, 2018-08-30

昨今,自閉症スペクトラム者への自己理解支援が重視されているが,当事者にとっての自己理解の意義や支援方法が十分に整理されているとは言い難い。そこで本稿では文献検討により自己理解支援の課題を整理した。自己理解には多様な意味があるが,支援は障害特性に焦点化しやすく,問題の原因を脱文脈的に本人に帰属しやすい問題があり,トータルな個人としての自己を捉える必要があると考えられた。一方,当事者の語りを重視するナラティヴアプローチや当事者研究では,応答的な語りが当事者の自己の回復や生きにくさの軽減につながることが示唆されている。ここからは当事者性を広義に捉えれば立場の違う同士であっても対話を通じて自己理解が展開される可能性が考えられる。しかし,当事者にとっての自己理解の意義や立場の異なる者とのかかわりのなかでどのように自己理解が紡がれるのかは明らかではなく,さらなる質的検討が必要である。

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ASDの自己理解についてまとまってる。 当事者研究やオープンダイアローグのその先のパラダイムにも触れてる。 https://t.co/VXbu1uZMGY

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