著者
草野 原々
出版者
北海道大学大学院文学研究院応用倫理・応用哲学研究教育センター
雑誌
応用倫理 (ISSN:18830110)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.34-44, 2022-06-30

本稿の目的は、ソーシャルロボットの倫理問題に対して、フィクションの哲学を使ったアプローチを提案することにある。第一部では、われわれがロボットを、社会的関係を結ぶことのできる社会的存在者として見なしているという事実を確認し、そこに倫理的問題が秘められていること、また、その問題がフィクションについて論じられてきた問題と類似していることを論ずる。第二部では、ロボットとわれわれとのあいだの社会的関わりを広い意味での「フィクション」とする「フィクション論的アプローチ」を提案する。先行研究であるRodogno(2016)と水上(2020)を確認し、水上はウォルトンのメイクビリーブ説を採用しているが、それは記述的には正しくないことを指摘する。第三部では、フィクションにかかわる情動を分析した「フィクションのパラドクス」を利用し、ソーシャルロボットにかかわる情動についてのトリレンマとなる「ソーシャルロボットのパラドクス」を提案する。そして、その分析からソーシャルロボットとの社会的関係をフィクションと見なしたときに生ずる倫理的問題を考察する。最後に、ソーシャルロボットの倫理的問題に関して、美学的観点から新しい光を投げかける。すなわち、社会的存在者としてのソーシャルロボットをフィクションと見なすべき美的規範があるのではないかという新たなアプローチを唱える。

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ソーシャルロボット倫理へのフィクション論的アプローチ : 社会的存在者としてのロボットはフィクションか? https://t.co/Z5OE9kGLSA ひょんなことから見つけたこの文章で紹介されている「IM機能」と「BK機能」の話が面白かった。 いまアシモフのロボット長編シリーズを再読してるんだけど、
げんげんのロボット倫理の論文見つけた https://t.co/JqzGB4pjFz

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