- 著者
-
馬場 典子
- 出版者
- 名古屋大学国際言語センター
- 雑誌
- 名古屋大学日本語・日本文化論集 (ISSN:1348804X)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, pp.17-36, 2018-03-31
本稿は、感情を表す動詞のうち、「嫌悪」の感情を表す動詞「嫌う」が持つ複数の意味について記述し、それらの意味の関連性を明らかにすることを目指した。分析の結果、「嫌う」には7つの別義が認められた。それらの別義は「メタファー」と「メトニミー」という比喩により動機づけられている。また、拙論では「感情を表す用法」と「感情以外のものを表す用法」に分けて考察していたが、本稿では「放射状カテゴリー」の概念を援用することにより、包括的な記述をすることができた。また「嫌う」には、他の動詞「避ける」と意味が近いものもあり、他の感情である「困る」との連続性が感じられるものもあることがわかった。さらには「感覚」という別の領域との繋がりもある例も認められた。