大学・研究機関において機関リポジトリの設置が普及するにつれ、リポジトリで公開したコンテンツの利用状況、中でもどのような特徴を持つコンテンツがよく使われるのかに注目が集まっている。本研究では論文の特徴の一つとして被引用数に着目し、機関リポジトリに収録された文献における被引用数とダウンロード数の関係を分析、被引用数からよくダウンロードされる論文を推測することが出来るかどうかを検討する。分析対象は北海道大学(HUSCAP)、京都大学(KURENAI)、筑波大学(Tulips-R)の3つの機関リポジトリに収録された雑誌掲載論文のうち、Web of Scienceにも収録されている論文である。各論文の被引用数と2008年中のダウンロード数をそれぞれ集計し、相関関係の有無を分析した。また、出版年や分野ごとの引用慣行による影響を排除するため、出版年別および物理学分野の論文に限定した場合についても分析を行った。分析の結果、被引用数とダウンロード数の間には相関はなく、被引用数の多寡からは機関リポジトリ収録後によくダウンロードされる論文を推測出来ないことがわかった。