著者
泉 桂子
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.133-184, 1998

近年,森林の公益的機能に対する一般の関心が高まりつつある中で,従来の木材生産中心の森林経営計画にかわって,森林の木材生産機能と公益的機能の両方に配慮した森林経営計画が求められている。このような多目的型の森林経営計画のあり方を展望する上で,90年余の経営蓄積を持ち,日本を代表する大都市水道局の所有・管理する森林である東京都水道水源林を対象として,研究を進めていく。筆者はこれまで,東京都水源林の経営計画の変遷について報告し,現在の経営計画は水源かん養機能高度発揮を目的とした水源林独自のものであることを明らかにした。しかし,水源林問題は河川をめぐる上下流の相互関係とも捉えられ,経営計画の変遷問題の解明にあたっても,この上下流の関係成立過程が極めて重要な意味を持つ。そこで,本研究では,水源林の経営前史における上下流の相互関係について明らかにすることを目的とした。

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