著者
長沼 美香子
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.121-128, 2015-03-01

本稿の目的は、明治初期の国家的プロジェクトとして翻訳出版された文部省『百科全書』(Chambers’s Information for the People のほぼ全訳)における「宗教」に関するテクスト群をそのコンテクストに定位して、翻訳研究の視角から読解することにある。そもそもreligion はどのように訳出されていたのか。「religion = 宗教」という翻訳等価の成立過程は、明治政府が欲望した近代国家体制といかに切り結ぶのか。近代日本の「宗教」をめぐる記憶を辿りながら、religion を翻訳する行為によって誕生した「宗教」が引き受けた二面性と、この翻訳語が同時に非「宗教」という領域を創出した帰結を翻訳テクストに問い直し、その根源に潜む翻訳語の宿命を近代日本語の出来事として探究する。

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