著者
長沼 美香子
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.121-128, 2015-03-01

本稿の目的は、明治初期の国家的プロジェクトとして翻訳出版された文部省『百科全書』(Chambers’s Information for the People のほぼ全訳)における「宗教」に関するテクスト群をそのコンテクストに定位して、翻訳研究の視角から読解することにある。そもそもreligion はどのように訳出されていたのか。「religion = 宗教」という翻訳等価の成立過程は、明治政府が欲望した近代国家体制といかに切り結ぶのか。近代日本の「宗教」をめぐる記憶を辿りながら、religion を翻訳する行為によって誕生した「宗教」が引き受けた二面性と、この翻訳語が同時に非「宗教」という領域を創出した帰結を翻訳テクストに問い直し、その根源に潜む翻訳語の宿命を近代日本語の出来事として探究する。
著者
長沼 美香子
出版者
日本通訳翻訳学会
雑誌
通訳翻訳研究 (ISSN:18837522)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.25-41, 2013 (Released:2021-11-29)
参考文献数
44

Translation is a complex event of performing intercultural communication and the concept of equivalence in translation is full of scandals. This paper explores the discourse of equivalence in relation to theories and applications of translation. Even if translational equivalence in terms of form or meaning between different languages is too naïve to be postulated, the illusion of equivalence remains one of the key words in distinguishing translation from non-translation. The author will first review a main stream of Translation Studies in the European and North American academia, focusing on how the concept of equivalence gave rise to the academic discipline of translation and later became criticized as a rigid linguistic model of analyzing symmetrical texts and making translators invisible. Following that review, Japanese discourse on translation by two antipodal theorists, NOGAMI Toyoichiro and YANABU Akira, will be highlighted to open up the current discussions about the imagined translational equivalence in a Japanese context.
著者
加藤 憲司 鈴木 志津枝 船山 仲他 福嶌 教隆 田中 紀子 岡本 悠馬 川越 栄子 長沼 美香子 益 加代子 植本 雅治 嶋澤 恭子 山下 正 松葉 祥一 金川 克子
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年度に引き続き、学部生対象の単位互換講座(10~1月 全15回)およびユニティ市民公開講座(7月 全5回)を実施した。今年度はロールプレイにスペイン語および中国語のネイティブスピーカーをそれぞれ招いて演習を行ったので、過年度よりも一層の臨場感を講義の中に盛り込むことができたと考える。ただしユニティ市民公開講座については、受講者数の減少が止まらず、市民への普及・啓発としての本講座の役割は終えたと判断することとした。医療通訳を巡る国内の情勢は極めて大きな変革期を迎えているため、常に最新の情報を踏まえて方向性を探る必要があることから、関連する第20回日本渡航医学会(倉敷市 7月)、第1回国際臨床医学会(東京 12月)などの学会や、全国医療通訳者セミナー(東京 8月)などのセミナーへ積極的に参加した。さらに、地元の兵庫県においても医療通訳の制度化に関する研究会が立ち上がり、3回の会合がもたれ、本研究チームからも複数のメンバーが参加した。調査研究については、昨年度末に1300通以上の質問紙を全国の一定規模以上の医療機関に発送したが、回収率は20%以下に留まった。データを一旦分析し、本学紀要に投稿したものの、追加のデータ分析をすべく取り下げ、現在も論文原稿を執筆中である。