- 著者
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高階 絵里加
- 出版者
- 京都大學人文科學研究所
- 雑誌
- 人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
- 巻号頁・発行日
- vol.101, pp.19-35, 2011-03
明治期の洋画家である高橋由一の油彩作品にっいては, 近年, その革新性のみならず, 江戸美術とのつながりにみられるような伝統的側面も研究されてきている。由一の風景画のなかでも, 明治14-5年ごろの制作とされる《山形市街図》は, 同構図の写真との影響関係から, 従来, 伝統的風景表現を脱した写実的絵画とみなされてきた。本小論では, この《山形市街図》が, 写真にもとづきながらも, 遠近法の消失点に中心モティーフを置く独特の手法において, 江戸名所絵の伝統を踏襲していることを指摘する。また, 群童にはない空の表現や点景人物の加筆などの点においても, 広重のような江戸の浮世絵風景版画の描き方とのっながりが見られることを考察する。