著者
中村 一
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.190-197, 1965-11-15

造園計画の哲学的側面は2つの問題に関して顕著にあらわれる。第1に造園が他の物的諸計画 (建築, 土木など) と協同して有機的生活環境を作り上げるための統一的な理論はないだろうかという問題がある。そのような理論的体系のひとつとして哲学そのものがある。ただしその哲学は科学との明確な相違点を自覚しつつ, しかも科学の諸成果を価値領域にもちこんで, 人間の未来を実験的に築いていくための理論を提供するものでなければならない。第2に専門化した造園計画の特色はなにかという問題がある。その特色は造園が扱う自然的材料にみられるが, ここで自然という言葉の哲学的内容が問題化する。私は自然の本質的特性である安定性と不安定性に注目して, 不安定性要因をより多くもつものとして, 「みかけの自然」の概念を仮説的に使用することによって造園計画の特色をより深い意味でとらえようと試みた。

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