著者
依田 高典
出版者
京都大学大学院経済学研究科
雑誌
京都大学大学院経済学研究科Working Paper
巻号頁・発行日
no.J-31, 2003-02

ネットワーク産業の生態学的分析を本論ではただネットワーク経済学と呼び、ネットワーク産業に共通する特質を明らかにしたい。本論が明らかにするところでは、ネットワーク産業には二つの柱がある。第一の柱は、ボトルネック独占と呼ばれるものである。第二の柱は、ネットワーク外部性と呼ばれるものである。ここでいうボトルネック独占は供給側の規模の経済性であり、ネットワーク外部性は需要側の規模の経済性である。規模の経済性が存在するシステムではいわゆるポジティブ・フィードバックが働き、初期値に応じて異なった振る舞いを示す。その場合、必ずしも効率的でない技術が普及したり、非効率的な技術がいつまでも居座り続け、社会的効率性を妨げることが起こる。また、システムが非線形なので、パラメータを変化させたときの影響が極めて不確定になり、産業政策の効果が予測不可能になるという問題も起きる。つまり、ネットワーク産業は複雑系なのである。本論文では、こうしたネットワーク産業の特質を順を追つて解説していこう。

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