著者
依田 高典 石原 卓典
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.132-142, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
23

金銭的インセンティブとナッジがどのような人間の行動変容をもたらすのか,行動経済学的なエビデンスの蓄積が進んでいる.本稿では,フィールド実験を通じた健康増進の先行研究の結果を概観し,京都府けいはんな学研都市で行った著者らの研究結果も紹介する.
著者
佐々木 周作 石原 卓典 木戸 大道 北川 透 依田 高典
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S14-S17, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
8

本研究では,日本全国に居住する20–69歳の男女個人8,520名を対象にオンライン実験を行い,その中で2つの寄付先活動(植林活動・被災者支援活動)を設定して,マッチング寄付・社会比較・両者の組合せの介入がそれぞれの活動に対する寄付額選択にどのような影響を及ぼすかを明らかにした.分析から,以下の結果が得られた.まず,平均介入効果は寄付先活動によって大きく異なることが分かった.具体的には,マッチング寄付単体の介入は植林活動では平均的に寄付額を上昇させる正の効果を持つが,被災者支援活動では同様の効果を持たなかった.さらに,機械学習の手法を使用して回答者ごとの介入効果を推定して,介入効果の分布の特徴と寄付先活動による分布の違いを明らかにするとともに,同一個人内で寄付先活動毎の介入効果を比較することにより,寄付先活動の違いによらず同様の介入効果を持つケースと,寄付先活動の違いによって異なる介入効果を持つケースの両方が存在することを明らかにした.
著者
大磯 一 依田 高典 黒田 敏史
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.37-47, 2021 (Released:2022-01-28)
参考文献数
29

プライバシー保護とデジタルサービス利用を推進する政策の探求の観点から、マイナンバーカー ド、COCOA、LINE、スマートスピーカーの4 種類のサービスについて、約1400~2400 のオンラ イン調査回答を用いて、サービス採用行動とプライバシーリスク感覚(リスク感覚)について分 析した。 採用行動分析では、主観確率で計測したリスク感覚、利便性評価、主観利用率及び新デジタル 製品への積極性が採用確率との間で有意の関係であること、リスク感覚は最大で6~10%ポイン ト程度の採用確率の変動をもたらすことが分かった。 リスク感覚の分析では、リテラシーとリスク感覚緩和の間の関係を確認したほか、スマートス ピーカー以外の3 サービスについて、オンライン事業者への信頼、個人情報保護制度への信頼及 び漏えい等ニュースが多いという感覚がリスク感覚の緩和と関係することを発見した。スマート スピーカーについては、インターネット上のトラブル経験とリスク感覚緩和の関係性を示した。 トラブル等の「悪い」情報と制度の対応状況や再発防止策等の情報の提供により、信頼・リテ ラシーの向上とリスク感覚の緩和、採用行動促進が可能と考えられる。
著者
吉田 和男 井堀 利宏 石黒 馨 竹内 俊隆 鈴木 基史 依田 高典 江頭 進 橋本 敬 瀬島 誠 藤本 茂 遊喜 一洋 秋山 英三 八横 博史 山本 和也 中川 真太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

テロや紛争、環境破壊、通商摩擦、金融危機といった今日の世界の秩序を脅かす諸問題は、相互に複雑に関連しあっているため、その解決には従来の個別対応的な方法では不十分である。本研究は、これら諸問題を総合的に分析し処方箋を提示するため、グローバル公共財(GPG)概念に依拠したシミュレータ(GPGSiM)を構築し、世界規模での秩序形成に必要なメカニズムを理論的・実験的に解明して、政策提言に役立てることを目指した。
著者
依田高典
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.30, pp.31-35, 2007-03-17

2007年初頭、日本のブロードバンド・サービスは、成長から成熟の踊り場にさしかかっている。従来、日本の情報通信産業の規制改革は、欧米に10年遅れていると言われ、欧米の先行する事例を専ら輸入してきた。図らずも、日本は、今、ブロードバンドの世界で紛れもなく世界の先頭に立っている。この成長のトレンドを維持できるのか、失速させてしまうのか、日本の情報通信産業の競争政策の舵取りはまことに難しい。ブロードバンド時代の競争政策の課題として"市場支配力とレバレッジ"、"NGN とネットワーク中立性"、"デジタル・デバイドと投資インセンティブ"の3点にわたって、計量経済分析も交えて検討する。By the beginning of 2007, growth in demand for broadband services in Japan had leveled off and gave way to a period of maturation. It was generally held some years ago that regulatory reform of Japan's telecommunications industry lagged ten years behind that of the West, but now the advanced precedents of Europe and the US has been completely absorbed, and quite unexpectedly Japan has emerged as the definitive global leader in the realm of broadband. Will the current growth trend be sustained or will it falter? Steering the proper course in formulating a beneficial competition policy in Japan's telecommunications industry is a difficult prospect indeed. Here I will address three fundamental challenges for competition policy in the broadband era with using empirical analysis: "Market dominance and leverage" "NGN and network neutrality" and "Digital divide and investment incentive".
著者
依田 高典
出版者
京都大学大学院経済学研究科
雑誌
京都大学大学院経済学研究科Working Paper
巻号頁・発行日
no.J-31, 2003-02

ネットワーク産業の生態学的分析を本論ではただネットワーク経済学と呼び、ネットワーク産業に共通する特質を明らかにしたい。本論が明らかにするところでは、ネットワーク産業には二つの柱がある。第一の柱は、ボトルネック独占と呼ばれるものである。第二の柱は、ネットワーク外部性と呼ばれるものである。ここでいうボトルネック独占は供給側の規模の経済性であり、ネットワーク外部性は需要側の規模の経済性である。規模の経済性が存在するシステムではいわゆるポジティブ・フィードバックが働き、初期値に応じて異なった振る舞いを示す。その場合、必ずしも効率的でない技術が普及したり、非効率的な技術がいつまでも居座り続け、社会的効率性を妨げることが起こる。また、システムが非線形なので、パラメータを変化させたときの影響が極めて不確定になり、産業政策の効果が予測不可能になるという問題も起きる。つまり、ネットワーク産業は複雑系なのである。本論文では、こうしたネットワーク産業の特質を順を追つて解説していこう。