- 著者
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大森 晃
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.3, pp.976-1023, 2019-03-15
本論文では,少なくとも以下のような内容を含む「所与の文が要求を表現しているか否かを判別するための言語学的知識」を与えた.(1)文レベルでの要求概念の定義,(2)所与の文(特に単文と複文における主節)が要求を表現しているか否かを判別するために必要な言語学的知識,(3)複文の接続節における要求表現に関する言語学的知識.本論文では上記(1)~(3)の内容からなる言語学的知識を「要求文同定論」という.要求文同定論は,様々な産業において要求に携わる技術者・研究者などの助けになるものと期待できる.そのため本論文では特定の産業分野に限定せずに要求文同定論を提供することを目指した.上記(1)については,日本語モダリティ論を手がかりとして要求とは何かについて考察し,文レベルで要求概念を定義した.上記(2)については,1つのまとまった言語学的知識として「要求の態度」を明らかにした.上記(3)については,どの接続節が要求を表現しえて,どの接続節が要求を表現しえないかに関する言語学的知識を明らかにした.また,要求を表現しうる接続節がどのような場合に要求を表現するのかに関する言語学的知識も明らかにした.上記(2)と(3)は所与の文(単文と複文)が要求を表現しているか否かを判別するための豊かな言語学的知識を与える.本論文では要求文同定のための言語処理技術についても言及した.さらに擬似要求文について検討し,「疑似要求文同定論」への発展の可能性を示唆した.