著者
木村 勲
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 文学部篇 = Journal of the Faculty of Letters, Kobe Shoin Women's University : JOL (ISSN:21863830)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-20, 2014-03-05

樋口一葉は近代日本における最初の職業的女性作家である。しかし、小説としては源氏物語や西鶴など伝統文芸の系譜のなかにあり、もっぱら古文で書いたということもあって旧派とみなされてきた。実際、代表作の『たけくらべ』(一八九五年)や『にごりえ』(同)は、遊郭や銘酒屋街という前近代的な場所における人間模様を扱ったもので、一見モダンを感じさせるものではない。とりわけ男女の凄惨な死で唐突に終わる『にごりえ』の評価は、代表作とされながら分かれるところもあった。ストーリー的に無理があるのだが、作品の魅力は疑いなく、すでに古典の地位を得ている。本稿は『にごりえ』の三年前に内田魯庵により邦訳された『罪と罰』が一葉に与えたインパクトを明らかにする。孤独地獄のラスコーリニコフに重なる虚無的なヒロインお力の検証を通じ、古い言語表現のなかに息づく一葉の先導的なモダニズムを検証する。

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