著者
奥井 現理
出版者
飯田女子短期大学
雑誌
飯田女子短期大学紀要 (ISSN:09128573)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.37-47, 2011-05-27

J.S.ミルの性格形成論は,自由意志論にではなく,必然論に依拠している.そうであれば,人間の性格形成は,あらゆる自然現象と同様に,因果関係をそこに見いだすことができる現象として想定されているのでなくてはならない.その際,人間の自由意志を第一原因とするのでなければ,究極的には,人間は自らの性格を自由に形成しているとはいえないのではないかという疑問が残されることになる.その一方でミルは,ロバート・オーエンの,いわゆる環境決定論を批判し,人間は自由に自らの性格を形成すると述べている.本稿では,ミルのオーエン批判を検討することを通して,ミルが批判したのは,オーエン理論の,性格形成論としての過度な単純さであって,環境決定論そのものではないこと,さらに,ミルは,自由意志を第一原因とすることが性格形成の自由の前提条件であるとは考えていないことが明らかにされる.

言及状況

Twitter (3 users, 3 posts, 5 favorites)

@micorun 環境決定論ですね。 民族などのマクロなレベルではジャレドダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』でと丁寧に語られています。名著なので是非! ミクロ(個人)のレベルでは、以下の論文は性格決定における二者(JSミルとロバートオーエン)の立場の差から解説しています。 https://t.co/K07URTRGvh

収集済み URL リスト