著者
古瀬 徳雄
出版者
関西福祉大学研究会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The Journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:13449451)
巻号頁・発行日
no.11, pp.19-28, 2008-03

エジソンが録音機器を1877年に発明した12年後,ブラームスがピアノで〈ハンガリー舞曲第1番〉をシリンダー録音し,後で「ブラームス」と叫んでいる声を放送で聴いた記憶があるが,この声は自身によるものか,他者が紹介している声なのか判別が難しいとされている.この頃,ドイツ音楽の巨匠の3大Bの一人である彼が,日本音楽と出会い,興味を示したといわれている.白いあごひげを蓄えたブラームスが,妙齢な女性の奏でる『六段』の箏の調べに耳を傾け,楽譜に見入る姿が四曲一隻の屏風に描かれている.プラームスの真髄は,ドイツ音楽そのものの伝統が隅々にまで浸透していることは言うまでもない.慎重な計画性と入念な仕上げは,重厚な表現を生み,絶対的な孤独や諦念に満ちた抒情性と秘められた憧れの表出が,質朴な人間性となじみながら深化し,浄福の味わいを持つに至っている.その彼が,日本文化の到来に刺激を受け,作品構造のひとかけらに,にじませていったものがあるのではないかと,その発見に取り組むことにした.そこで,1888年頃,『六段』をウィーンで聴取した年に一致する彼の作品《二重協奏曲》に焦点をあて,日本文化の作風への波及について論じたものである.

言及状況

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@tsudamuneaki 影響というと具体的には、ヴァイオリンとチェロの二重協奏曲でのチェロのピッチカート奏法や、冒頭のe-d-hの音形が平調子である、という辺りで影響を指摘してる論文があった、、 https://t.co/FX3KaVJETm
ここに書かれているレメニー来日の話とブラームスの二重協奏曲の話は面白い。しかも来日して明治天皇の前で演奏したとか。 明治19年に日本を含む世界一周なんて、レメニーはヴェルヌの「八十日間世界一周」にでも感化されたのだろうか。 この世界一周話。映像化しないかあ。 https://t.co/XTIE1qGrqQ https://t.co/LeSYzfgeOp
とある機会がありこのボクレット教授による六段のピアノ譜を探していたら、古瀬氏の論文に、ある程度読める楽譜と、ブラームスの修正箇所についての詳しい説明があるじゃないですか 助かります! https://t.co/4oRIsIXnoI https://t.co/AY90UdRjeC
@s_5100 あと、このような紀要論文まで。 「J.Brahmsの日本文化の影響による作品についての試論」 https://t.co/F6s4GFgRf2

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