- 著者
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児島 明
- 出版者
- 和光大学現代人間学部
- 雑誌
- 和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.55-72, 2008-03
日本の学校に通う経験を持ちながら、早くから就労の世界に身をおくようになる在日ブラジル人の若者の進路選択過程は、学校からの離脱及び学校から離脱した後の就労への水路づけの過程として描きだすことができる。学校からの離脱は、国家間移動のみならず地域間移動や帰国/再来日という多層的な移動経験の結果であるだけでなく、学校での困難及びそれに対してなされる学校側の対応の在り方が大きく影響する。とりわけ、不登校対策や進路相談といった生徒の学びの可能性を保障するための実践が、逆に学校からの離脱の促進という意図せざる結果を生みだしてしまう現状に目が向けられる必要がある。そして、離脱の過程で、あるいはその結果としてかれらが形成する「脱出の物語」は、家庭でも学校でも早期就労を引き止める力が働かないことによって消費社会と接続する。在日ブラジル人の若者の早期就労は、主体的選択という観点からのみでなく、かれらを取り囲む環境的要因との関連において説明される必要がある。