著者
古山 萌衣
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.15-29, 2014-12-30

本論は日本が援助国として深く関わるカンボジアについて、そこでの障害者問題に注目したものである。既存の統計データをもとにカンボジアにおける障害者の現状を分析し、今後の障害者福祉・教育施策の課題について検討を行った。まず、内戦終結からの復興および開発途上にあるカンボジアにおける障害者の実態として、中高年層の男性障害者を中心に、現在も戦争被害による影響が色濃く残っている。一方で、若年層の障害者においては、農村部では医療体制の未整備、都市部では交通事故の増加等を背景とする障害比率が高くなっている。このような現状について、戦争・紛争時代の戦後処理の一環として、地雷・不発弾被害者を含む戦争被害者を中心とした障害者支援施策を図るというこれまでの取り組みから、今後は戦争被害者に対象を限定しない幅広い障害者問題への対応および支援施策の展開とともに、国民生活に関わる社会政策の推進が広く求められるということを主張した。また、カンボジアにおけるインクルーシブ教育の推進について、障害者教育は「Education for All」のコンテキストのなかで議論されるべき課題であることを指摘した。カンボジアにおける国民全体の識字率および就学率は向上する傾向にある一方で、障害者についてはその教育レベルは低調な状況にある。基礎教育の完全普及において、依然として貧困やジェンダー、都市部と農村部の地域差は、教育機会を制限する要因となっている。「Education for All」をめざす教育開発のなかでその課題解決・対応と同様に、「障害」による特別な教育的ニーズについての対応が求められるということを主張した。

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