著者
藤岡 孝志
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 = Study report of Japan College of Social Work : issues in social work (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.115-129, 2018-03

社会的養育臨床における支援者支援養育論をここでは展開する。それは、職員支援や里親支援を中核としたものであり、職員や里親が支援されてこそ、子どもの安定的な養育が実現する。 すなわち、この養育論の中核となるのは、支援者支援である。そして、その支援者が支援されることで、安定的で継続的な養育環境を子ども達に提供し続けることができる。 安定した養育者には、安定した愛着行動を子どもたちは向けることができ、愛着対象の内在化が実現する。その安定した養育者の統合感の保持がその内在化を促進すると考えられる。施設職員・里親は、被虐待児やネグレクト児のトラウマや愛着上の様々な課題に対処せざるを得ず、疲弊し、自己統合感の侵蝕を常時受けていると考えられる。子ども達の問題行動・課題行動(暴言、暴力、嘘、万引き等の非行行動・逸脱行動、不眠、基本的生活習慣の構築のしづらさ、ルールの守れなさ 等)による施設職員や養育里親、養子縁組里親の傷つきや疲弊は、深刻である。だからこそ、その侵蝕による自己統合感の低下、主体的な養育への意欲の低下、解離的な一貫性のない養育への無意識的な自動化・ルーチン化などをさけるための共感疲労対策などの支援者支援が欠かせないのである。本論文は、以上の点を3 部に分けて、論述した。Ⅰ支援者支援養育論―社会的養育臨床における「支援者支援」の点―、Ⅱ愛着臨床と支援者支援学、Ⅲ支援者支援の実際 である。そして最後に、Ⅳ支援者支援養育論の要点をまとめた。施設の小規模化、グループホーム化、里親支援の強化などの理念が推し進められていくには、『支援者支援養育論』が確立されることが大前提となるとの論考を展開した。

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