著者
藤岡 孝志
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 = Study report of Japan College of Social Work (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.201-237, 2011-02

本研究では、フィグリーらによって開発された質問紙の日本語版による調査に基づき、今後の共感満足/共感疲労に関する質問紙の標準化に関する研究を行った。さらに、それらを踏まえた、バーンアウト対策、共感疲労対策との関連性を検討した。 データ分析の結果、藤岡(2007)と同様の結果を得ることができた。共感満足については、「仕事仲間との関係における満足」、「利用者との関係の中での満足」、「援助者の資質としての満足」、「人生における満足感」の4因子が抽出された。共感疲労に関しては、「代理性トラウマ」、「否認感情」、「PTSD様状態」、「援助者自身のトラウマ体験」の4因子が抽出された。これらは、マスラックらの作成したバーンアウト尺度との相関も高く、かつ、因子構造も同様の結果が得られた。それぞれを4群に分けて分析した結果、共感満足、共感疲労、バーンアウトの総合得点は、施設内におけるバーンアウト予防、共感疲労対策、共感満足への気づきなどに有効に活用できることが示唆された。これらを踏まえ、以下のような点が示唆された。1.共感満足尺度は、既存の標準化されたバーンアウト尺度の下位因子である「情緒的消耗感」や「脱人格化」とは負の相関を示し、「個人的達成感」とは正の相関を示すことが示唆された。2.共感疲労尺度は、消耗感や脱人格化とは、正の相関を示し、個人的達成感とは関連していなかった。3.共感満足において、勤務年数について、有意な差が見られ、10年間の見守りが必要であることが示唆された。4.援助者としての代理性トラウマ(利用児者から受ける二次的被害、二次的トラウマティックストレス)が、(援助者自身の)家族の「三次的トラウマティックストレス」と関連していることが示唆された 最後に、これらを踏まえた援助者支援における4つの課題が提示された。すなわち、1.調査対象領域の展開の必要性、2.継続的な調査の必要性、3.施設間の違いや特定施設・機関の個別性の検討、4.援助者支援学の構築の必要性。
著者
藤岡 孝志
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 = Study report of Japan College of Social Work : issues in social work (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.115-129, 2018-03

社会的養育臨床における支援者支援養育論をここでは展開する。それは、職員支援や里親支援を中核としたものであり、職員や里親が支援されてこそ、子どもの安定的な養育が実現する。 すなわち、この養育論の中核となるのは、支援者支援である。そして、その支援者が支援されることで、安定的で継続的な養育環境を子ども達に提供し続けることができる。 安定した養育者には、安定した愛着行動を子どもたちは向けることができ、愛着対象の内在化が実現する。その安定した養育者の統合感の保持がその内在化を促進すると考えられる。施設職員・里親は、被虐待児やネグレクト児のトラウマや愛着上の様々な課題に対処せざるを得ず、疲弊し、自己統合感の侵蝕を常時受けていると考えられる。子ども達の問題行動・課題行動(暴言、暴力、嘘、万引き等の非行行動・逸脱行動、不眠、基本的生活習慣の構築のしづらさ、ルールの守れなさ 等)による施設職員や養育里親、養子縁組里親の傷つきや疲弊は、深刻である。だからこそ、その侵蝕による自己統合感の低下、主体的な養育への意欲の低下、解離的な一貫性のない養育への無意識的な自動化・ルーチン化などをさけるための共感疲労対策などの支援者支援が欠かせないのである。本論文は、以上の点を3 部に分けて、論述した。Ⅰ支援者支援養育論―社会的養育臨床における「支援者支援」の点―、Ⅱ愛着臨床と支援者支援学、Ⅲ支援者支援の実際 である。そして最後に、Ⅳ支援者支援養育論の要点をまとめた。施設の小規模化、グループホーム化、里親支援の強化などの理念が推し進められていくには、『支援者支援養育論』が確立されることが大前提となるとの論考を展開した。
著者
藤岡 孝志
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 = Study report of Japan College of Social Work (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.171-220, 2012-03

Based on the investigation by Japanese edition of questions developed by C. Figley et al(1996,2002), I examined the Optimal Level Model of Compassion Fatigue that relates to Compassion Fatigue and the functioning as a care giver to children with some troubles.Inspected by the number of people with Compassion Fatigue and relations with other indexes, care givers and social workers were divided to main three parts, A, B, C type.Types A indicated low level on Compassion Fatigue mainly on area 1. Type B indicated middle level on Compassion Fatigue mainly on area 2,3,4. Type C indicated High level on Compassion Fatigue mainly on area 5. The burnout risk of Type C was higher than other groups.Furthermore, I examined differences in 5 groups, and High/Low groups on Compassion Fatigue.1) Significant difference between Compassion Fatigue High and Low was watched in three factors, Satisfactions with colleagues, with clients or children and Satisfaction in life except for Satisfaction to profession as a care giver.2) Compassion Fatigue became high related to burnout significantly. So it was suggested that Compassion Fatigue could predict burnout of a care giver or a social worker.About differences of support items for care givers in Low and High groups of Compassion Fatigue, many items of supports were high level in Low group of Compassion Fatigue. But some items had high score in the high Compassion Fatigue group.From these findings I considered the meaning of Optimal Level Model of Compassion Fatigue.Furthermore, I examined the relationship between Compassion Fatigue and Functioning (Professionalization as care givers and social workers) used FR behaviors questionnaires and Caregiving Behaviors on the stand points of Attachment theory.As a result, it was suggested that FR behaviors rose in relation to Compassion Fatigue in all four factors of FR behaviors.On the other hand, Caregiving Behaviors on the stand points of Attachment theory did not have the difference among all groups of Compassion Fatigue.Furthermore, I examined necessity of individual support and made each comment format for individual support as practice example of supports on the standpoint of Optimal Level Model of Compassion Fatigue.Four tasks based on these were shown last.1. Researches to make clear the characteristics of three types of Compassion Fatigue. 2. Necessity of construction of Functioning as a care giver. 3. Examination and working-out on support items for care givers or social workers, 4.Necessity of construction of study to think about support to a care giver or a social worker.
著者
藤岡 孝志
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.142-154, 1999-03-30

本論文の目的は, まず, 授業における教育臨床的な側面と教師の職能発達, 及び今日的な課題である不登校に焦点を当てた様々な研究を概観し, その上で, 日本独自の教師(特に担任)サポートを中心としだスクールカウンセリングシステムの構築に向けての試論を展開した。その際, 合わせて, スクールカウンセリング活動についてもその研究を概観した。最後に, 今後の展望として, 以下の6つの観点を提案した。(1)個別, 集団によるカウンセリングだけでなく, コンサルテーションやコーディネーション, ピア・カウンセリングなどの重要性 (2)スクールカウンセラーによる多様な側面への介入の必要性。(3)個別教育計画の作成に果たす心理学専門家の役割の明確化と貢献。(4)授業における教育臨床的な観点に焦点を当てた実証的・実践的な研究の推進。(5)教師の職能発達における教育臨床的な側面の実証的・実践的な研究の推進。(6)教師による「教育行為」と心理学の専門家による「心理行為」の明確化と両行為相互の役割供応に関しての実証的・実践的な研究の推進。