著者
小澤 京子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.35-48, 2020-03-31

「レトロブーム」とともに人気を博した丸田祥三の廃墟・廃線写真集『棄景』シリーズ、最終戦争後の荒廃した未来都市を舞台とする大友克洋の漫画『AKIRA』(1982年〜)、根岸競馬場跡の廃墟での撮影を含むミュージックビデオ『A Y.M.O. FILM PROPAGANDA』(1984年)、廃工場を舞台背景とした東京グランギニョルやBIS-SEAL-PISHOPの演劇(1985-87年)、都市の中の廃墟とそこに集う「棄民」的な人々を描いた映画である山本政志監督『ロビンソンの庭』(1987年)や松井良彦監督『追悼のざわめき』(1988年)、取り壊し中の建築物を被写体とする宮本隆司『建築の黙示録』(1988年)、スクラップと身体が融合するイメージを扱った三上晴子の作品群や塚本晋也監督『鉄男』(1989年)など、1980年代の日本では、とりわけサブカルチャーの領域を中心に、「廃墟」、「遺棄された場所」、「スクラップ」というテーマが特徴的に現れ出る。そこには、長い伝統を持つ西洋の廃墟愛好や廃墟表象とは異なる時代性が刻印されている。それは、1980年代における核戦争の脅威、高度経済成長終了後の産業構造と労働市場の変化、バブル期の開発による都市のラディカルな変貌、それらがもたらす人間の棄民化、身体の廃墟化である。本稿では、1980年代の「廃墟、遺棄された場所、スクラップ」の系譜をたどりつつ、1980年代固有の都市の態様と、人間の身体が置かれた状況とを明らかにしてゆく。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (8 users, 10 posts, 20 favorites)

小澤京子「1980年代の日本のサブカルチャーに現れた「廃墟」や「遺棄された場所」のイメージ」 和洋女子大学学術リポジトリ https://t.co/Km7hSdptrm
そいや、グランギニョルについて論文調べてるときに面白い論文見つけたのでそっち系好きな人お手隙の際に是非。 https://t.co/cuFvtAcPbb https://t.co/KKmxqDsuoU
映像の一部分(ミミズ抜き)はEizo workshopのFacebook投稿で見られた:https://t.co/c0huJdbyJU 1980年代と廃工場とその中の人間。昨年のこの論文(https://t.co/CLm1i3qVXj)は「同年代にこういう作例があります」の列挙で終わってしまったから、その先を考えているのだけれども。
1980年代の日本のサブカルチャーにおける廃墟については、今年3月刊行の紀要論文でちょっと論じています:https://t.co/MV3qhII1jW
1980 年代の日本のサブカルチャーに現れた「廃墟」や「遺棄された場所」のイメージ | 和洋女子大学学術リポジトリ https://t.co/W965fR1Jcu
最近刊行された拙稿その2。 「1980 年代の日本のサブカルチャーに現れた 「廃墟」や「遺棄された場所」のイメージ」『和洋女子大学紀要』61号:https://t.co/MV3qhII1jW 我ながら、年代の区切り方も事例の選び方も恣意的で、必然性を欠くと思いますが、「遺棄された場所」をめぐる探究の地均しとして。

Wikipedia (1 pages, 1 posts, 1 contributors)

編集者: 2409:10:8500:1D00:2165:2D7E:9441:44D4
2023-05-09 14:06:50 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

収集済み URL リスト