著者
有馬 善一
雑誌
摂大人文科学 = The Setsudai Review of Humanities and Social Sciences (ISSN:13419315)
巻号頁・発行日
no.23, pp.81-104, 2016-01

ハイデガー哲学において、ニヒリズムは極めて大きな問題であるとともに、その問題性は多面的な様相を示している。それを明らかにするために、本論文は、①ハイデガーのニーチェ哲学との対決とその解釈において現れるニヒリズムの問題、②ハイデガーの存在史的な思想の中で現れるニヒリズムの問題の2 つを課題として取り上げる。また、①の問題と関連して、③ニーチェのニヒリズムとはいかなるものであったのか、も明らかにされなければならない。本論文における分析・考察の結果は次の通りである。①ニーチェ思想におけるニヒリズムがパースペクティヴィズムとの連関において肯定的性格を示していること、②ハイデガーの存在史的な解釈において、ニーチェのニヒリズムのこの性格が正当に評価されていないこと、③ハイデガーにおいては、ニヒリズムの現象は、形而上学の歴史の全体において〈存在〉が逃れてしまうということとして捉えられており、形而上学の本質そのものがニヒリズムであると考えられていること、④ハイデガーによれば、ニヒリズムの今日的な現象は科学技術の世界支配であり、ハイデガーはニヒリズムを耐え抜くことの必要性を説くが、反面、技術支配の〈危険〉についてのハイデガーの認識には少なからぬ問題があるということ、以上4 つの点が明らかとなった。

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