- 著者
-
小坂 美保
Miho OSAKA
- 雑誌
- 女性学評論 = Women's Studies Forum
- 巻号頁・発行日
- vol.32, pp.53-72, 2018-03-20
スポーツにおいて素晴らしい記録がでたとき、当該アスリートには「賞賛のまなざし」と「ドーピングでは?」「疑惑のまなざし」が向けられる。女性アスリートには、この2つのまなざしだけでなく、「男性では?」という「性別へのまなざし」が加わる。本報告では、性別に疑惑を向けられたある女性アスリートを事例に、スポーツにおける性別問題について考察をおこなった。競技を実施する上での平等性の確保とともに、女性のパフォーマンスが男性をうわまわる可能性を排除しようとする構造がスポーツ界に存在するのではないだろうか。そのために、髙いパフォーマンスを発揮した女性アスリートに対して「性別疑惑」が浮上し、「女性選手」のカテゴリーへの包摂を拒むのである。そして、当該選手が、「女性選手」として競技に参加するためには、「女性選手」という枠組みに適合する身体にならなければならない。近代スポーツは、「女」か「男」かという二分法を揺るがす選手の存在は、近代スポーツが抱える「女性/男性」という枠組みの枠組みの限界を示しているともいえるのである。