- 著者
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川嶋 周一
- 出版者
- GRIPS Policy Research Center
- 雑誌
- GRIPS Discussion Papers
- 巻号頁・発行日
- vol.16-17, 2016-10
本稿は、1955 年から 57 年にかけて交渉が行われ、58 年 1 月1 日に成立した欧州原子力共同体(以下、ユーラトム)がどのように成立し、そして機能していったのかを、ユーラトムが 50 年代から 60 年代にかけて確立していったグローバルな核秩序の中にどのように位置づけられるのか念頭に置きながら、考察するものである。ユーラトムは、現在の欧州連合(EU)の前身を構成する共同体の一つであり、現在でも一定の役割を果たしている。しかし、ユーラトムの双子として生まれた共同市場の欧州経済共同体(EEC)がその後EU につながる土台を提供するほどの成功を収めたのとは対照的に、原子力共同体は急速にその存在意義を失い、そしてほぼ忘れられた共同体となった。ユーラトムとは何だったのか。本稿は、欧州各国の未公刊史料を用いて、ユーラトムをヨーロッパ統合というよりもむしろ、50 年代の後半から 60 年代にかけて形成されていく、核エネルギーの平和利用レジームや北大西洋条約機構(NATO)を含めたより広いグローバルな核秩序の中に位置付けようとする。その際、ユーラトムは、ヨーロッパがアメリカに対する協調と自立を求める相矛盾する狭間の中で成立した、ある種のエアポケットであるさまが描かれるであろう。