- 著者
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五味 文彦
- 出版者
- 国立歴史民俗博物館
- 雑誌
- 国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, pp.119-141, 1992-12-25
現在、国立歴史民俗博物館に所蔵されている「六曲屏風」貼付け高山寺文書は鈴木茂男・山本信吉両氏により紹介されて以来、広く注目を集めてきたものであり、その後、石井進氏は関係文書(八条院関係文書群)を収集して、ほぼ全貌を明らかしている。しかしその性格をめぐっては未だ不明な部分も多く、また未紹介の文書も幾つか存在する。そこで本稿では本文書群の全体的な性格をとらえるべく、その年代比定を出来うる限り行ってみた。第一章では、正月付の文書が多く存在する点に着目して、それらが文治四年正月の文書であること、摂関時代の僧安然が唐に渡った最澄・空海らの請来した典籍を分類整理した『諸阿闍梨真言密教部類総録』の書写に料紙として利用されたものであることを指摘した。第二章では、藤原実清充ての文書が多い点に着目して、それらが養和元年・二年の文書であることを解明した。第三章では、元暦元年の年号のある文書が多い点から、元暦元年の文書を拾い集めてその性格を考え、それらが実清の子長経の保管に関わる文書であることを指摘した。第四章では、以上には即断できない文書をまとめて考え、それらが養和元年・二年か、元暦元年のものかに分類できることを見た。全体として、藤原長経が八条院の別当として関与したことによる文書が、この八条院文書群の基本的な性格であることがわかった。