著者
菅根 幸裕
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.58, pp.139-161, 2018-06-30

平成30年3月、文部科学大臣は、中央教育審議会に公民館・図書館・博物館の所轄を教育委員会から首長部局への移転の可能性について諮問した。中央教育審議会は同年7月9日、特例としてこれを認めるとする答申を行った。一方、平成30年4月21日、政府の未来投資会議構造改革徹底推進会合「地域経済・インフラ」第4回会合で、文化庁は「アート市場活性化に向けて」という発表を行い、この中でリーディング・ミューゼアムの検討を明らかにした。これはアート市場活性化の役割を美術館や博物館にも担ってもらうというもので、このリーディング・ミューゼアムに指定された美術館や博物館には国から補助金が交付され、学芸員を増やすという優遇措置がされるという内容である。聞こえは良いが、実際にはミューゼアムが資料をオークションに売却する構造が示され、その売却のために展覧会などの活動が使われるというものである。結果として学芸員が美術市場に関与する必要が生じ、そのために学芸員は「残すべきもの」を見極める能力が必要ということになる。博物館の観光利用による地域活性化が提唱されて以来、様々な変動が起きている。前述の博物館の管轄が首長部局移転すれば、博物館は観光施設として営利活動を行うことを余儀なくされるであろう。一方、リーディング・ミューゼアムは、美術館・博物館の自活促する有効な手段であると解釈することができる。よって、博物館の生き残りのためには、生涯学習施設・教育的配慮などは等閑にならざるを得ないという結論になる。簡単に言えば、これからの博物館活動の基準は「資金稼ぎ」なってしまうのである

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