- 著者
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菊地 伸二
Shinji Kikuchi
- 雑誌
- 研究紀要 = Nagoya Ryujo Junior College annual report of studies (ISSN:13427997)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.53-61, 2014-12-20
アウグスティヌスは、カトリック教会に回心した後、約15年間にわたり、さまざまな「マニ教反駁書」の執筆にとりかかる。この小論では、「マニ教反駁書」の中でも、とくに、聖職の道を歩み始めた後に書かれた二つの作品である『二つの魂』と『マニ教徒フォルトゥナトゥス駁論』を取り上げて考察する。この二つの作品において、アウグスティヌスは、マニ教が主張するところの善悪の二つの本性を徹底的に批判するとともに、悪の原因を人間の自由意思のうちに求めていくが、そのような人間の自由の擁護は、神の自由というより完全な姿を前提とすることによって成立するものである。また彼は、「マニ教反駁書」を執筆するという営みの中で、マニ教徒の「パウロ書簡」の解釈に出会うとともに、そのような解釈を批判する中で、自らが「パウロ書簡」のより精緻な読解へと導かれていくのであり、そのことが彼の「自由意思」の理解を深めることにつながっていくのである。