著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.213-224, 2013-12-20

ここに翻訳されたのは、ラテン四大教父の一人であり、6世紀から7世紀初頭にかけて活躍した大グレゴリウス(教皇グレゴリウス1世)が執筆した『牧会規定』全体の序の部分と第1部である。 第1部は、11の章から構成されており、そこでは、人を指導し、教える立場にある牧会者(聖職者)を目指そうとする人は、それ相応の学と経験を積んでいることが必要であるとともに、上に立ちたいという欲求に駆られて軽率に志すべきではないことが再三論じられている。
著者
菊地 伸二 Shinji Kikuchi
雑誌
研究紀要 = Nagoya Ryujo Junior College annual report of studies (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.53-61, 2014-12-20

アウグスティヌスは、カトリック教会に回心した後、約15年間にわたり、さまざまな「マニ教反駁書」の執筆にとりかかる。この小論では、「マニ教反駁書」の中でも、とくに、聖職の道を歩み始めた後に書かれた二つの作品である『二つの魂』と『マニ教徒フォルトゥナトゥス駁論』を取り上げて考察する。この二つの作品において、アウグスティヌスは、マニ教が主張するところの善悪の二つの本性を徹底的に批判するとともに、悪の原因を人間の自由意思のうちに求めていくが、そのような人間の自由の擁護は、神の自由というより完全な姿を前提とすることによって成立するものである。また彼は、「マニ教反駁書」を執筆するという営みの中で、マニ教徒の「パウロ書簡」の解釈に出会うとともに、そのような解釈を批判する中で、自らが「パウロ書簡」のより精緻な読解へと導かれていくのであり、そのことが彼の「自由意思」の理解を深めることにつながっていくのである。
著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
no.41, pp.41-55, 2019-12-20

トマス・アクィナス(以下、アクィナスとする)は、古代ギリシアに遡源し、教父や中世の神学者にも大きな影響を与えることになる「枢要徳」についてどのように理解しているのだろうか。本論では、『神学大全』第II-I部における叙述を中心に考察をしていく。 徳とはそもそもいかなるものか、徳はどこに成立するのか、徳にはどのような分類が可能であるか、ということが検討された後に、知慮、節制、剛毅、正義という「枢要徳」についての考察がなされるとともに、信仰、希望、愛といういわゆる「対神徳」とも区別される。 アクィナスの枢要徳については、アリストテレス的な枠組の中で思索が進められているが、一方で、アウグスティヌスからの影響も小さくなく、とくに、徳を愛との関係で捉えることについては、修正が加えられながらも、アクィナスに大きな影響を及ぼしている。
著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.15-23, 2015-12-20

「書簡」186と「書簡」194は、いずれも416年から418年の間にかけてアウグスティヌスによって執筆された作品であり、両者とも、ペラギウス主義の問題点について扱っている。アウグスティヌスによれば、人間の本性は、原罪によって著しく損なわれ、救済されるためには、人間の自由意思は単独では何ら有効な働きをすることは不可能であり、神の恩恵が先立ち、また、神の恩恵が共に働くことによってはじめて、救済への道が開かれる。ペラギウス主義は、人間の自由意思の働きをきわめて肯定的に捉え、恩恵を、いわばその補助手段的に捉えることにより、人間の側からのみ自由を理解しようとしたが、そのために、創造主である神の領分を十分に取り扱うことができず、神の側から神の自由を考察することには失敗したと言える。
著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.63-69, 2014-12-20

アウグスティヌスは、「自由意思と恩恵」の問題について、ペラギウス(及びペラギウス主義者)との間で、20年近くにわたり論争を繰り広げた。それは、アウグスティヌスの逝去によって中途で幕切れとなるものであったが、この論争によって、彼は「自由意思と恩恵」の問題について思索を深めるとともに、この問題についての後世への影響は測り知れないものとなった。もっとも、アウグスティヌスが、この問題を思索しはじめたのは、司祭に叙任されてから間もなく、「パウロ書簡」を精読するようになってからであり、とくに『ローマの信徒への手紙選釈』では、「ローマの信徒への手紙」の大意を「律法と恩恵」に関する書物と位置づけ、その中で、人間がもつ自由意思と神からの恩恵の双方を重視しようとする見解を披歴している。その見解は、たしかに、『シンプリキアヌスへの返書』に見られるような「自由意思と恩恵」についての決定的な見解にまでは至っていないものの、人間の「信仰」に働く自由意思を重視しながら、自由意思と恩恵の双方を生かそうとする態度が見受けられるものであり、彼の「自由」理解の一断面を示すものとして重要な意味を有するものである。
著者
岡崎 文明 一ノ瀬 正樹 小浜 善信 伊集院 利明 谷 徹 榊原 哲也 杉田 正樹 日下部 吉信 須藤 訓任 赤井 清晃 柏端 達也 塩路 憲一 古田 智久 三浦 要 菊地 伸二
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の課題は<西洋古代から現代に至る二千六百年に及ぶ哲学史の統一的理解・再構築は可能か?>である。我々は共同研究を通じて再構築は可能であると結論することができた。これは「実存的歴史観」(vde.渡邊二郎『歴史の哲学-現代の思想的状況-』講談社、1999)によって支えられる。その具体的な姿は本研究グループの各メンバーによって各に示される。研究代表者の見解を要約すれば、西洋哲学史には2伝統、即ち古代ギリシア哲学(=ヘレニズム=善の優位性の思想)の伝統と西洋中世以降の哲学(=ヘブライズム=存在の優位性の思想)の伝統とが存存する。両伝統における「万有の根源の解釈」は根本的に異なる。しかし両者は新プラトン主義(原型)の第2段階「存在者-生命-知性」(三一)を或る仕方で共有することによって相互影響を受け、中世以降に新たな思想を生む。その結果、中世では存在論が、近世では認識論が、現代では生命論、新たな認識論と存在論がそれぞれ中心となった新しい哲学生まれる。中世から現代に至る諸哲学は1セットとして、ギリシア哲学に対峙し得る。その内容は下記の研究成果に示される。我々の研究成果の一部はまず第1の共同研究成果論文集『西洋哲学史の再構築に向けて』(1999)に示される。この外にもメンバー21人の各の研究論文等においても示される。その成果総数は学術論文209本、國内外の学会・研究会口頭発表87回、図書(単著)9冊である。更に平成15年中に第2の共同研究成果論文集『西洋哲学史観と時代区分』を公刊しようとしている。続く第3の共同論文集『現代の哲学-二千六百年の視野において-』は平成15年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)に申請中である。さらに第4の共同論文集『西洋哲学史再構築試論』も平成16年度科究費(研究成果公開促進費)に申請する予定である。以上が研究成果概要である。