- 著者
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佐藤 雅浩
- 出版者
- 埼玉大学教養学部
- 雑誌
- 埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.2, pp.53-74, 2021
本稿の目的は、「うつ」で通入院経験のある人々を対象とした社会調査によって得られたデータを分析することで、精神疾患に関する医学的知識が、どのような経路を辿って社会に普及し、また人々に受容されているのかについて、その実態を明らかにすることである。佐藤(2019)においては、上記調査における回答者の属性的特徴や通院・治療経験、医療情報の取得経路、診断前後の意識変化などについて、主として計量的な観点から分析を行った。本稿では上記論文の問題意識を引き継ぎつつ、特に「うつ」で通入院経験のある人々が、受診前から接触していた医療情報の取得経路について、より詳細な検討を行う。具体的には、調査対象者らが、自身の「うつ」に気が付くきっかけとなったと考えている各種の情報源について、その概要と媒体の特徴を考察する。この作業により、精神疾患の流行と関連するI. Hacking の言う「ループ効果」について、その過程の一端を経験的な水準から明らかにすることが、本稿の最終的な目標といえる。