著者
荒井 美音里
出版者
跡見学園女子大学附属心理教育相談所
雑誌
跡見学園女子大学附属心理教育相談所紀要 (ISSN:21867291)
巻号頁・発行日
no.12, pp.63-72, 2016-03

本研究では,自己嫌悪感の肯定的側面を探究することを目的に,自己内省,自己形成意欲,アイデンティティ達成との関係を検討した。質問紙調査を女子大学生340名に行った。結果,実証的な先行研究では,自己嫌悪感と自己内省は負の関係があったが,本研究では関連性がないことが明らかになった。また,自己嫌悪感高群は中群に対して5%水準で有意に自己形成意欲が高いことが明らかになった。さらに,自己嫌悪感と自己内省は自己形成意欲に対して正の影響を与えていたが,その決定係数はR2=.055であり,影響力は低いことが示唆された。加えて,自己嫌悪感,自己内省,自己形成意欲はアイデンティティ達成に対して正の影響を与えており,決定係数はR2=.397であった。しかし,回帰係数を見てみると,自己嫌悪感がβ=-.592,自己内省がβ=.143,自己形成意欲がβ=.097とその影響力は従属変数ごとにばらつきがあった。これらのことから,本研究の結果は,自己嫌悪感が青年期の自己形成において重要な意味を持つという従来の指摘を支持するものであったが,それはごく一部に過ぎず,青年期のアイデンティティ達成に至る道筋をすべて説明することはできないという事が分かった。

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https://t.co/6rr1VGqlrO 「エリクソン(1950) によれば,アイデンティティとは「過去において準備された内的な斉一性と連続性とが,他人に対する自分の存在の意味―『職 業』という実体的な契約に明示されているような自分の存在の意味―の斉一性と連続性に一致すると【思う】自信の積み重ねである」

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