- 著者
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小嶋 洋介
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, pp.263-291, 2013-10-10
本論稿は、その目的の大前提に、副題に示した「自然の存在学」というテーマがあり、このテーマの展開上に位置づけられている。その中の一主題である絵画をめぐる問題に即して、ファン・ゴッホは取り上げられている。ただ、この論稿は純粋なファン・ゴッホ論として立てられているのではない。軸はハイデガーの思想の方にある。何故ハイデガーなのか。それはハイデガーが、ファン・ゴッホの絵を梃子にして独自の思索へと発展させた重要な一論を出しており、そこで論じられている内容を無視してファン・ゴッホを論究することはできないからである。そこで第一節では、その著名な論文『芸術作品の根源』において、何が論じられているかを解明することに努めている。第二節では、今度はファン・ゴッホの側から見て、ハイデガーの思想との連関性を探る。ここで両者に響きあう主要概念が「大地」と「自然」である。ただ最終節で、我々はこの論題をファン・ゴッホとハイデガーの問題領域の内部に収斂させて終えるわけではない。「大地と自然」の問題の元型性を探求するために、東洋思想との接点を模索する。この論稿をステップに、「自然の存在学」をさらに展開させていくための道を呈示することが、根本的目的となっているからである。