- 著者
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近藤 弘幸
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- vol.91, pp.1-35, 2018-09-30
本論は、明治時代における「活字になった『ロミオとジュリエット』」について整理することで、以下の三点を明らかにする。①『ロミオとジュリエット』といえばバルコニー・シーンが有名であるが、明治の人々の心をとらえたのもこの場面だった。②それを踏まえて際立つ坪内逍遥の特異性。坪内は、自らの翻訳を刊行する前に雑誌で一部を先行公開しているが、あえて第四幕以降を選んでいる。その選択は、初期の『ロミオとジュリエット』受容があたかもバルコニー・シーンだけで事足れりとしていたことに対する、アンチテーゼのように思われる。③明治という新しい時代を迎えておよそ二〇年を境に、受容のモードに変化がみられる。この頃から「英文学研究」が制度化され、本格的な受容が始まる。さらに世紀をまたぐと、日本の観客のための『ロミオとジュリエット』が登場し、新しい教育制度のもとで学んだ人々による『ロミオとジュリエット』が出版されるようになる。