- 著者
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川崎 明子
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- vol.99, pp.25-54, 2021-09-30
本論文は,ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』(Through the Looking-Glass, 1871)における冒険が,主人公アリスが鏡に向かって行うごっこ遊びと独り言の延長であり,彼女が睡眠中も継続する想像・創造であるという前提のもと,鏡やチェスの原理が作品のシステムとして作用する様を明らかにするものである。まず1 では,冒頭でアリスが猫と鏡を使った遊びからファンタジーの想像・創造に至る過程を確認する。2 では,作品における鏡について論じ,2.1で鏡の原理である<反転>のうち<対面し見つめる>ことと<空間的・時間的反転>の具体化を,2.2で本作独自の鏡の使い方といえるアリスが自分の鏡像を見ないふりをすることについて考察する。3 では<時間的反転>の1 種である過去への逆行の例として,各章に登場する子どもの遊びや学びを検討する。最後に4で,『鏡の国のアリス』に関係する諸人物間の連関の形成について,キャロルとアリス・リデルをも含めて考察する。