著者
川崎 明子
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.271-297, 2020-09-30

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』において,不思議の国の〈不思議〉を構成する最大の要素は,多種多様な〈変身〉である。これらの〈変身〉には,言語的要素と生物的要素があり,両者は互いに密接にかかわっている。前者は静的で,死に近く,完結していて,秩序があり,時間がかからない。後者は動的で,生命を持ち,制御しにくく,時間を伴う。物語の根底で作用しているのは数学者キャロルによる言葉遊びの原理,特に地口における単語の置換という言語的変身であるが,そこにも生物がかかわり,変身後に生物の存在感が強まる。生物の強い存在感,特に個体が自由に動いたり時間を伴って変化したりすることは,同時代のチャールズ・ダーウィンの進化論による生物への注目と連動している。本論文では変身を,言葉や物質が登場人物化する〈非生物の生物化〉と,アリスをはじめとする登場人物が物理的に変化する〈生物の変身〉に大別して論じる。
著者
川崎 明子
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.25-54, 2021-09-30

本論文は,ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』(Through the Looking-Glass, 1871)における冒険が,主人公アリスが鏡に向かって行うごっこ遊びと独り言の延長であり,彼女が睡眠中も継続する想像・創造であるという前提のもと,鏡やチェスの原理が作品のシステムとして作用する様を明らかにするものである。まず1 では,冒頭でアリスが猫と鏡を使った遊びからファンタジーの想像・創造に至る過程を確認する。2 では,作品における鏡について論じ,2.1で鏡の原理である<反転>のうち<対面し見つめる>ことと<空間的・時間的反転>の具体化を,2.2で本作独自の鏡の使い方といえるアリスが自分の鏡像を見ないふりをすることについて考察する。3 では<時間的反転>の1 種である過去への逆行の例として,各章に登場する子どもの遊びや学びを検討する。最後に4で,『鏡の国のアリス』に関係する諸人物間の連関の形成について,キャロルとアリス・リデルをも含めて考察する。
著者
北尾 悟 安藤 真美 川崎 明子 原田 倫夫
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-22, 2021 (Released:2021-07-02)
参考文献数
14

In order to promote the effective use of mirin lees, which is a large amount of squeezed meal produced in the pressing process of mirin brewing, its function and processed food using mirin lees were verified. Since mirin is known to have antioxidative ability, it is expected that its pomace has a similar function, so the peroxyl-radical scavenging activity was measured. As a result, the radical scavenging activity was low in raw mirin lees, but the scavenging activity tended to increase depending on the storage and aging period of the lees. From the change in color difference, it was speculated that the production of browning substances due to the aminocarbonyl reaction was largely involved. The antioxidant ability of the cookies and the radish pickled with mirin lees also increased with the use of the lees with a long storage aging period. Furthermore, from the sensory test, it was suggested that it is necessary to improve the palatability by examining the ingredients used and the blending ratio. From the above results, it is considered that the possibility of new utilization development of mirin lees with added functionality is expanded.