- 著者
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福 寛美
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- vol.103, pp.279-300, 2022-09-30
『琉球国由来記』の石垣島の条には聖山、於茂登岳の神の由来譚が書かれる。於茂登岳の神はオモト大アルジといい、神女オモトオナリに憑霊し、神の由来を語る。オモトオナリの兄で、神を信じないハツガネは、神に山や海の巨大な生物を見せるよう要求し、大猪や大鮫を殺して喰ってしまう。神をじかに見たがるハツガネとオモトオナリは於茂登岳の頂上で神に会い、驕ったハツガネに神は糠をかける。ハツガネの身体には虱がつき、苦しんだハツガネはオモトオナリを殺害し、自分も死んで石と化す。オモトオナリの死骸は神によって於茂登岳に取り上げられた。オモトオナリは、於茂登岳の名、オモトと琉球の生き神信仰、オナリ(姉妹)神のオナリの名を持つ神的女性であり、死後、於茂登岳と一体化した。オモトオナリと神、そしてハツガネの物語を目撃し、神を崇敬する聖域を創出したのがハツガネの弟のタマサラである。タマサラは、始原世界に聖域をつくった。聖域から世界が拡大する、という発想は『おもろさうし』のおもろに存在する。この物語に若干の分析を加えた。