- 著者
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山本 百合子
- 出版者
- 福山市立大学
- 雑誌
- 福山市立女子短期大学紀要 (ISSN:02866595)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, pp.57-66, 2008
本報では,文献により消えない身体装飾の「いれずみ」について調べた。結果は以下の通りである。1.「いれずみ」は所属を表したり,通過儀礼であったり,死後の世界へのパスポートであった。2.「いれずみ」は中国,日本では刑罰の一つであった。3.「いれずみ」は環太平洋地帯に位置するオセアニア,フィリッピン,インドネシア,台湾,日本,ロシア東部(シベリア),カナダ(カナダエスキモー),アメリカ(アメリカインディアン),メキシコ,ペルー,ブラジル(アマゾン上流域の原住民)等の多くの国の諸族に見られた。また,インドから北アフリカなどにも広く見られた。4.「いれずみ」は民間治療としても用いられていた。男女を問わず,神経痛やリウマチ,腰痛等の治療に腰・膝・肘等に施術されていた。5.江戸時代鳶頭達が「勇気」の象徴として,浮世絵を模した派手な意匠を身体の多くの部分に施術した。