著者
川本 真由子
出版者
大阪府立大学
雑誌
大阪府立大学紀要 人文・社会科学 (ISSN:04734645)
巻号頁・発行日
no.40, pp.p47-54, 1992

『アセンズのタイモン』は、E.K.チェインバーズの推定によればシェイクスピアの悲劇の最後のもの(1607-8)である。そしてこの劇が、先行するとされている二つの悲劇『リア王』(1605-6)と『コリオレーナス』(1607-8)に、それぞれ非常に類似した要素を含んでいることは、容易に見てとることができる。しかし、劇全体として『アセンズのタイモン』は、『リア王』が我々に与える感動も、また『コリオレーナス』が与える種類の感動も我々に与えない。この小論では、これらの作品との類似点に注目しつつ、『アセンズのタイモン』が、真に悲劇的感動を引き起しそこねている理由について考察してみたい。