著者
井上 ウィマラ
出版者
パーリ学仏教文化学会
雑誌
パーリ学仏教文化学 (ISSN:09148604)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.73-88, 2017 (Released:2019-02-01)

Practice of taking care of the sick among ordained practitioners during the Buddha’s time seems to have carried critical importance. Therefore, five conditions of a good caregiver for the sick and five conditions of a difficult patient to take care are elaborated in Vinaya. This paper surveys the context as to why the practice of nursing had such an importance in Buddhist practice from the standpoint of mindfulness meditation and modern clinical education in nursing. The author will share the insights obtained from university education of spiritual care about the third condition of a good care giver for the sick (giving care with loving kindness, not from an expectation of something); the awareness of the unconscious motivation to become a care giver will support him/her to survive and attain emotional maturation through the difficulties of clinical practice. Roshi Joan Halifax created the G.R.A.C.E. program in order to prevent burnout syndrome in terminal care, with her students who practice Buddhist meditations and also are educators in the medical environment. We will examine this G.R.A.C.E. program from the perspective of traditional understanding of Buddhist meditation practice: mindfulness (sati-paṭṭhāna), the three steps of learning (sīla, samādhi, paññā) and the four boundless hearts (appamaññā). Especially in the analysis of the near-enemy and far-enemy of four boundless hearts explained in Visuddhimagga, the emotional maturation of medical practitioners in the clinical human relationship will be examined from the standpoint of integration of ambivalence psychoanalytically. Towards the end of this paper, readers will hopefully have some better understanding about how ancient meditation practices had a fundamental impact on the humane maturational process and how we can improve modern medical practice and education by utilizing those ancient experiential wisdoms.
著者
バルア シャントゥ
出版者
パーリ学仏教文化学会
雑誌
パーリ学仏教文化学 (ISSN:09148604)
巻号頁・発行日
no.29, pp.79-98, 2015-12-22

バングラデシュはイスラム教徒,ヒンドゥー教徒,仏教徒,キリスト教徒,およびその他多数の精霊信仰的土着宗教から構成される,文化的民族的多様性に富んだ国である。けれども,仏教がこの国の始まりの時代から導入されており,特に7世紀から12世紀までの間は多くの仏教王朝により庇護された国家的宗教であったことは注目に値する。その結果,仏教はバングラデシュの文化を豊かにするために極めて重要な役割を果たした。12世紀以降は,さまざまな政治的逆境のために仏教徒はその栄光を失い少数派宗教への道をたどった。仏教の衰退にともない多くの仏教徒少数民族は自らの宗教的アイデンティティを失い,精霊信仰と共に先住民(アーディヴァーシー)としてのアイデンティティを受容することとなった。オラオン族はそのなかでも注目すべき存在である。オラオンは,かつてはクルクとも称されていた,バングラデシュの最も古い土着民族である。ドラヴィダ族に属し,黒色の皮膚,低鼻,黒く縮れた毛髪,短頭,中背といった特徴をもつ。オラオン社会は多くの部族に分かれ,年間を通じて多様な民間儀礼・儀式を行っている。彼らは豊かな歌謡,伝統舞踏,民間伝承,また伝統的楽器を有しており,男女とも巧みな踊り手である。オラオンの伝承によれば,先祖は密教的仏教の信者であったという。しかし時とともに全ての仏教的儀礼・儀式は忘れさられ,習合的民間信仰の徒となっていた。21世紀に入って多くのオラオンが仏教に帰依しつつある。だが,上座仏教の信者となったにもかかわらず,その習俗は仏教的倫理に反する面も多い。同じ上座仏教の仏教徒といえども,彼らには多種多様な民衆儀礼や儀式があり,それらはバングラデシュの他の民族コミュニティとも異なっている。これらの儀礼や儀式を通して,彼らは独自のコミュニティとしてのアイデンティティを維持している。とりわけ葬儀は義務的な儀式として注目すべきものである。葬儀はバングラデシュの宗教コミュニティ全てにとって義務的な儀礼であるが,その作法はコミュニティによって異なる。バングラデシュの仏教徒がオラオン社会に仏教を伝えて以来,彼らの慣習はオラオン族に多大な影響を与えてきた。バルア・コミュニティは,同一の死の宗教的儀礼に従っている。しかし死の儀礼として行われている社会民衆儀礼においては相違点が見られる。本論文では葬儀の様々な儀礼と儀式を紹介し,他のコミュニティとの相違点を明らかにする。またオラオン族固有の葬儀の方法を指摘する。
著者
竹内 良英
出版者
パーリ学仏教文化学会
雑誌
パーリ学仏教文化学 (ISSN:09148604)
巻号頁・発行日
no.5, pp.55-73, 1992-05-30
著者
田辺 和子
出版者
パーリ学仏教文化学会
雑誌
パーリ学仏教文化学 (ISSN:09148604)
巻号頁・発行日
no.26, pp.193-221, 2012-12-22

名古屋市所在の覚王山日泰寺には,タイ国王室から分骨されたインドピプラーワーでペッペによって発見された仏舎利が納められている。仏舎利奉迎の際にタイ国王ラマ五世から贈られた仏像と仏足跡も安置されている。それに加えて日泰寺にはタイ国から贈られた写本が所蔵されている。その写本カタログは,柏原信行氏によって『パーリ学仏教文化学』第14号に報告されている。本稿ではこのカタログをもとに重要写本,それのカヴァー,入れ物の影印と写本の大きさ,ナンバーを加えて報告した。そしてその中からプラマーライ・クローンスアットと呼ばれるプラマーライの絵付折本紙写本(日泰寺本)を選んで,タイ国の18世紀前半作製の水牛寺(Wat Hua Krabu)所蔵の絵付折本紙写本(水牛寺本)と比較対照し,その同異を述べ,タイのサムットコーイと呼ばれる葬儀本の実態を調査する。
著者
奥村 浩基
出版者
パーリ学仏教文化学会
雑誌
パーリ学仏教文化学 (ISSN:09148604)
巻号頁・発行日
no.14, pp.69-77, 2000-12-20