著者
高橋 原 鈴木 岩弓 木村 敏明 堀江 宗正 相澤 出 谷山 洋三 小川 有閑
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

東日本大震災の被災地において、大量死に直面し悲嘆を抱える人々は様々な形で死者の霊の表象と向き合っており、それが「心霊体験」として表現されたときに、宗教者は地域文化や各宗派の伝統を参照しながら臨機応変に対応していることが明らかになった。本研究ではその対応の特徴として、 (1)受容と傾聴、(2)儀礼の提供、(3) 倫理的教育、(4)自己解決(自然治癒)の了解、という諸点を指摘したが、これは、さまざまな支援者が存在する中で、宗教者が担い得る「心のケア」の特質を考える時に貴重な示唆を与えるものである。
著者
谷山 洋三
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.457-478, 2006

本稿の目的は、死の臨床において宗教者が優先するべき援助方法について考察することである。末期患者とその家族が抱える苦悩の一つに、死後についての問いがある。このことは、ターミナルケアへの宗教者の関与を促すものだが、それは日本のターミナルケアに宗教者の関与を保証するものではない。その関与の方法について、すなわちスピリチュアルケアと宗教的ケアの相違については、臨床的見地から吟味する必要がある。失敗例を含む五つの事例からは、さまざまな死後存続の信念が素朴に表わされ、それぞれの信念に沿った対応が必要であることが分かる。筆者自身がビハーラ僧として経験したものであり、それらを提示・分析した。諸事例とその考察等によって、宗教者が優先するべき援助方法は、対象者を教義的に導くこと(宗教的ケア)ではなく、対象者の信念に寄り添うこと(スピリチュアルケア)である、ということを明らかにした。
著者
湯浅 資之 上野 里美 谷山 洋三 吉武 尚美 岡部 大祐 アウン ミョーニエン
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

脳の電気化学反応で生じるメンタルヘルスと異なり、生きる意味や人生の目的を質的に認知するスピリチュアルヘルス(SH)は、WHOも健康の定義へ加えることを討議しているが、SHに関する国民の共通理解も無い日本など慎重な国の棄権により追加は見送られている。独自の死生観を持つ日本人に適合したSHとは如何なるものか。本研究者らはその問いに対し「生き方を自己選択すること」との仮説を立て、本研究でこれを実証する。海外の文献を検討してSHの定義と分類、測定法を整理し、アジアや日本でSHに対する意識調査を行い、科学的かつ学際的見地から日本人に適合するSHの定義仮説を検証し、結果を普及するための書籍化を目指す。
著者
谷山 洋三
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.347-367, 2012-09-30

災害時においては、地元の宗教者がチャプレンとして、スピリチュアルケアや宗教的ケアを通して被災者(=悲嘆者)に対応することが、欧米では当然のこととして理解されている。東日本大震災に際し、宗教者はさまざまな支援活動実施してきたし、今後も必要とされている。弔いとグリーフケア、被災者の不安を和らげる祈りや傾聴活動など、様々な支援活動の中から、布教伝道を目的とせずに、宗教、宗派の立場をこえて、宗教的ケアを実践した事例を参考にして、災害時のチャプレンの可能性と課題を考察する。これからも起きるかもしれない災害に備えて、日本各地で災害チャプレンを育成しておく必要性がある。そのための課題は、ルールを共有した超宗教の組織づくり、医療者や自治体との連携のための信頼関係の構築、宗教的ケアの質や効果の検証、そして地域性を考慮した体制づくりである。