著者
梶本 玲子
出版者
国際女性の地位協会
雑誌
国際女性 (ISSN:0916393X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.12, pp.141-147, 1998-12-15 (Released:2010-09-09)
参考文献数
12

アメリカ連邦議会は1998年10月, 女性の直面している「シリコンの天井」 (コンピュータリタラシーの遅れによる女性の社会的地位の低下) について調査委員会を設立するための予算を通しました。科学, 工学, 技術開発における女性の就職昇進, 給与, 男女平等な処遇などについて調査する11人からなる委員会であり, 100万ドルの経費をかけた研究は, 少数民族や障害者の女性についての研究も行う予定ですハイテク業界のロビイング活動により, 外国人技術者のアメリカ国内での雇用は増加しました。ここで, なぜ女性技術者が外国人技術者と同様増加しないのか, という疑問が持たれたわけです。この業界に入った女性に何が起きているのか。メンターはいるのか。同じ能力の男性と同等の地位にいるのか, という問題意識です。他の研究がすでに, ハイテク業界における男女格差を立証しているため, 今回の研究はその理由に焦点があてられます。女性や少数民族の科学者や技術者の直面している障害を明らかにすることによって, 労働力全体のレベルが, 情報化時代のハイテク経済に対応できるようにすることがその目的です。教育省のデータによるとコンピュータサイエンスの学位を持つ女性が1984年の37.1%から1994年の28.4%に減っています。1995年現在で女性は科学技術分野でたった22%の労働力を構成するのです。そして, 彼女たちの年収のメジアン (中間値) は4万2千ドル, 男性の5万2千ドルの20%減です。「たとえ良い点をとっていても, 私は数学が苦手だと思っていました。」とあるUNIXマガジンのエンジニアの女性が言っているように, 女性が文化的に科学や技術から疎外されるようなしくみが残っているのが最大の原因なのでしょう。女性にはいろいろな機会が用意されているのに, 女性本人が「私には無理だわ。」と思い込んでこの業界に飛び込まないことが最大の障害なのです。