著者
亀崎豊実
出版者
医薬ジャーナル社
巻号頁・発行日
pp.43-53, 2018-12-30

溶血性貧血は,高齢者でみられる貧血の原因としては比較的稀であるが,しばしば急性発症し重篤になり得る。貧血患者に黄疸や乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇を認めた際には,溶血を念頭に置いて検査を進める必要がある。高齢者の溶血では,後天性の溶血性疾患である自己免疫性溶血性貧血や発作性夜間ヘモグロビン尿症,赤血球破砕症候群,薬剤性溶血などが主な鑑別疾患としてあげられる。輸血以外の包括的な治療法が存在しないことから,病型診断の確定が治療法選択や予後の推定に重要である。
著者
内田奈生 熊谷直憲 根東義明
出版者
医薬ジャーナル社
雑誌
血液フロンティア (ISSN:13446940)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.205-214, 2019-01-30

腎臓は生体の恒常性の維持に重要な役割を果たしており,腎機能が低下すると高血圧,浮腫,電解質異常,心不全などが起こる。慢性腎臓病の患者数は増加の一途であるが,現行の治療は対症療法や進行抑制にとどまり,失われた腎機能を回復する手段は腎移植のみである。そのため,腎臓の再生医療に期待が寄せられ,研究が進められている。本稿では,腎臓病に対する幹細胞治療の現状,Muse細胞を用いた腎臓病治療の基礎実験と展望を紹介する。
著者
大橋十也
出版者
医薬ジャーナル社
雑誌
血液フロンティア (ISSN:13446940)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.613-623, 2015-04-30

遺伝性白質ジストロフィーは,大半の疾患は治療法がないが,先天代謝異常症でもあるKrabbe病,異染性白質変性症,副腎白質ジストロフィーでは,それらの中枢神経障害に造血幹細胞移植が効果がある。しかしながら,造血幹細胞移植はドナーを得られないことも多く,また同種移植であるため,生着のために強力な前処置を必要とする。造血幹細胞を標的とした遺伝子治療は,それらの問題を回避できる。最近は異染性白質変性症,副腎白質ジストロフィーで,レンチウイルスベクターを用いた造血幹細胞を標的とした遺伝子治療が良好な結果を得ている。