著者
高田 敦之 太田 和宏 北浦 健生 北 宜裕
出版者
神奈川県農業技術センター
雑誌
神奈川県農業技術センター研究報告 = Bulletin of the Kanagawa Agricultural Technology Center (ISSN:18813305)
巻号頁・発行日
no.157, pp.7-16, 2014-03

冬季温暖な神奈川県三浦半島地域において,寒玉系キャベツをその端境期である4~5月に生産するための品種及び栽培技術について検討し,晩抽性寒玉系新品種を用いた夏まき4月どり作型と秋まき5月どり作型の組み合わせにより,安定生産が可能なことを明らかにした。夏まき4月どり作型では,晩抽性で耐裂球性の高い中晩生~晩生品種を用い,8月下旬播種,9月下旬~10月上旬定植により3月に収穫期に達した個体を在圃させることで,4月上旬~中旬に収穫できた。この場合,在圃期間中にも肥大が進むため,畝間密植(栽植密度7,047株10a-1)しても大玉(2L~3L)になり,多収となった。一方,秋まき5月どり作型では,晩抽性で肥大性に優れる早生~中早生品種を10月上旬~中旬播種することにより,4月中旬~5月下旬にかけて連続収穫できた。本作型では,疎植(栽植密度4,761株10a-1)が大玉生産に有効で,収穫開始期も早まるが,収量の向上には結びつかず,株間密植(栽植密度7,002株10a-1)の方が多収となった。4~5月どり寒玉系キャベツの千切りカットにおける加工適性は,同時期に収穫する春系品種と比較して歩留まりが高く,葉質や機械適性等が良好で,実需者の評価が高かった。
著者
北浦 健生 太田 和宏 吉田 誠 曽我 綾香 野路 稔 伊藤 智司 岡田 英孝 北 宜裕
出版者
神奈川県農業技術センター
巻号頁・発行日
no.160, pp.1-6, 2016 (Released:2016-09-14)

青首総太り品種が主流となっている現在のダイコン生産・流通体系において,特色あるダイコン新品種の開発を目的に、白首総太りダイコンの一代雑種品種を,神奈川県農業技術センター,民間育種家及び横浜植木株式会社の3者で育成した。花粉親系統については当所と県内育種家が育成を担当し,2003年から‘大蔵’及び‘晩野路’を交配母本に用い,集団選抜法により根形が円筒形の系統を育成した。2009年の集団選抜第6世代以降,形質の分離幅が縮小したため,横浜植木(株)保有の雄性不稔系統を種子親としたF1交雑検定を並行して実施した。計25の交雑系統から有望な系統‘UON’を選抜し,特性検定及び現地適応性試験を実施した。その結果,‘UON’は根部が首部を含め全体が白色で円筒形,甘味が強く,‘耐病総太り’と同等の食味評価を確認したことから,‘湘白’と命名し,2013年3月5日に品種登録出願し,2015年6月19日に品種登録を受けた(農林水産省登録番号第24375号)。
著者
北 宜裕 小堺 恵 河田 隆弘 北浦 健生 窪田 一豊
出版者
神奈川県農業技術センター
巻号頁・発行日
no.153, pp.17-22, 2010 (Released:2012-12-06)

夏作ホウレンソウ栽培において,ホウレンソウの生育及び収量を最適化できる土壌消毒のための熱水処理量について,0~200L・m-2の範囲で検討した.その結果,深さ15cmの土壌の最高温度は,100・m-2以上の処理区では熱水処理後3時間で87℃以上に達し,その後,Fusarium属菌の致死温度である55℃以上の地温の持続時間も6時間以上確保された.熱水処理後の土壌中のFusarium属菌数は,上層及び下層ともに50L処理区では低密度で残存していたが,それ以外の処理区では全く検出されなかった.発病度は100~150L処理区が最も低い値を示した.収量性は発病度を反映し,発病度が最も低かった100L処理区で最も収量が多くなった.以上の結果から,ホウレンソウ栽培では,実用レベルでの土壌病害防除効果があり,高い収量性が確保できる最適熱水処理量は100L・m-2であることが明らかになった.
著者
柳下 良美 山元 恭介
出版者
神奈川県農業技術センター
雑誌
神奈川県農業技術センター研究報告 (ISSN:18813305)
巻号頁・発行日
no.149, pp.7-15, 2007-03

既存の冬咲き性品種に無い特徴を持つ品種の育成を目的として交雑育種に取り組んだ。1996年に'当所育成系統367-1-(1)'×'Wiltshire Ripple'及び'当所育成系統365-1-(7)'×'Lilac Ripple'の組み合わせで交配を行った。以降、冬咲き性で花弁に吹きかけ型斑紋を有する個体の自殖を繰り返し、F6で冬咲き性で旗弁の地色が黄白で斑紋色が明紫、F7で冬咲き性で旗弁の地色が黄白で斑紋色が明紫赤及び旗弁の地色が黄白で斑紋色が暗紫赤の系統を得た。いずれの系統も既存の冬咲き性品種には見られない花弁に吹きかけ型条班をもち、花弁の波打ち程度が大きいオープン花である。生育、開花は安定しており、栽培後期にも切り花本数の減少は少ない。これらの系統を'リップルラベンダー'、'リップルピーチ'及び'リップルショコラ'と命名し品種登録に出願し、2005年3月14日に'リップルラベンダー'、2006年2月27日に'リップルピーチ'及び'リップルショコラ'が品種登録された。