著者
徳井 教孝 木村 秀樹 嶋川 成浩 三成 由美
出版者
中村学園大学薬膳科学研究所
雑誌
中村学園大学 薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.7, pp.29-33, 2014-09-30

(要旨)漢方治療と腸内細菌叢には密接な関連があり、詳細な腸内細菌叢の科学的分析が可能であれば、腸内細菌叢分析をもとに証の判定が可能となることが期待される。そこで、今回地域住民を対象にした健康調査のデータを用いて、腸内細菌叢をクラスター分析して得られた6つタイプと8つの中医体質(気虚、脾虚、陽虚、血虚、陰虚、気滞、湿熱、血瘀)の関連を検討するパイロット調査を行った。タイプ1では陰虚、湿熱、タイプ2では気虚、脾虚、タイプ4は気虚、脾虚、血虚、気滞、タイプ5は陽虚、血虚、血瘀、タイプ6湿熱との関連性が推測された。タイプ4は特徴的な体質がみられず中医学的には平の体質と考えられた。今回用いた腸内細菌叢分析法と体質評価法は妥当性の問題が残っており、今後さらに精度を上げた分析法、調査法を実施して腸内細菌叢と体質の関連を検討していく必要がある。
著者
三成 由美 濱田 綾子 北原 詩子 入来 寛 御手洗 早也伽 大仁田 あずさ 宮原 葉子 徳井 教孝
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceeding of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.8, pp.43-66, 2016-02-29

【目的】 平成17年に食育基本法が施行され、現在、第2次食育推進基本計画が実施されている。その中で、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針として、生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底と健康を支え守るための社会環境の整備が掲げられている。平成20年よりメタボリックシンドローム関連リスク保有者のコントロール、すなわちハイリスクアプローチに主点を置いた特定健康診査・特定保健指導の制度がスタートしている。この事業に関わる管理栄養士は効果的な食事指導を行い、評価しなければならない。本研究は、対象者の身体状況に配慮しつつ行動変容につながる効果的な保健指導をすることができるように、家庭料理に着目して、食事パターンの構造とその栄養素摂取量について検討した。【方法】 1.基礎データの収集:1999年~2000年に福岡県志免町在住の一般主婦を対象に実施した食事秤量記録調査を基礎データとした。調査は55~65歳の女性48名の四季の各14日間の食事区分、献立名(料理名)、食品名、可食量が記録されたものを使用した。2.解析方法:食事パターンは、主食・主菜・副菜・副々菜・汁物を組み合わせて49パターンに分類し、さらに類似するものを15パターンに整理した。各パターンの栄養素等摂取量はエクセル栄養君Ver.4.5(建帛社)を用いて算出して、料理のデータベース化を行った。栄養素摂取量の評価基準は、日本人の食事摂取基準2005年版を基にして50~69歳 成人期女性{身体活動レベルのレベルⅡ(普通 : 1.75)}とした。解析には、統計解析ソフトExcel 統計2008 for Windowsを使用し、クロス集計にはχ2検定を用い、2群間の平均値の差の検定にはSteeldwassの多重検定を用い、有意水準はp <0.05とした。【結果】 一般の家庭料理で出現する様式は四季共に約60%が和食であり、洋食は約30%であった。家庭料理の全体の80%に寄与する献立は春期と夏期で各14パターン、秋期15パターン、冬期12パターンであり、家庭料理は習慣化された食事パターンであることが示唆された。食事区分別に朝食で寄与率の高いパターンはE1型(主食+副菜+汁物)でPFC 比率が14.0:16.6:69.4であり、基準値に比べて、たんぱく質、脂質、カルシウムそしてビタミン類が不足していた。昼食の22.1%に寄与するL2型(主食兼主菜)はPFC 比率が14.7:26.8:58.5であり、食物繊維とカルシウム、ビタミン類が不足し、食塩摂取量が過剰であった。夕食の14.9%に寄与するB1型(主食+主菜+副菜)は、PFC 比率が18.2:30.6:51.2であり、たんぱく質、脂質、食塩摂取量は過剰であり、食物繊維は基準値を満たしており、カルシウムが不足していた。【結論】 食事調査の調理品を一定基準で分類することにより、食事パターンと栄養素等摂取量の間に関連があることが示唆され、食事区分別の食事パターンの特徴及び不足や過剰となる栄養素等が明らかとなった。特に、「主食、主菜、副菜、副々菜、汁物」が揃った一汁三菜の食事パターンが健康増進に寄与すると考えられているが、本研究結果から「望ましい食事」だとは言い切れないことが示唆された。保健指導において、食事パターンとその栄養素摂取量を図示し、栄養指導媒体を作成し導入することにより、食習慣を変えず、効果の期待出来る栄養指導が可能になると考えられる。
著者
徳井 教孝 三成 由美
出版者
中村学園大学薬膳科学研究所
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-54, 2012-09-01

(要旨)多くの日本人は便秘の症状を有しているが、便秘を定義することはむずかしいとされている。これまで内科学では便秘は週に3回未満の排便と定義されることが多かったが、臨床上、多くの便秘患者は排便頻度が正常であるにもかかわらず、排便時のいきみ、便の硬さ、下腹部膨満感、排便後の残便感などを訴えるため、排便回数だけで便秘を評価するのは不十分であるとされ、2000年に米国消化器学会のコンセンサス会議が開かれ便秘の診断基準が作成された。一方、中医学における便秘の概念は毎日便通がないこと、毎日便通はあるが排便の時間が長い、便の質が硬いなどで、毎日便通があることが基本的に重要であると考えられている。病態的には水分(津液)不足と腸管の蠕動運動減退が関与していると考え、6つの便秘の体質が分類されている。1989年、癌患者のケアーのために便秘の評価尺度が開発された。この尺度は開発後、健常人を対象にした調査でも使用されているが、今後は健常人の便秘の病態を評価できる尺度の開発が望まれる。
著者
三堂 徳孝
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.6, pp.49-52, 2013-09-17

(はじめに)海苔は日本人の庶民の味を代表する海産物であるが、1食当たりの摂取量は少量で、更に食習慣の変化により食べる頻度も少なく、近年消費が低迷している。海苔の消費形態は殆んど板状の乾燥海苔であり、海苔製品は、焼き海苔や調味料で加工した味付け海苔、佃煮などで種類に乏しい。食育基本法が平成17年に制定され、地産地消が叫ばれている中、生産地においても新たな海苔製品の開発が求められている。収穫した生の海苔は、乾燥した海苔にはない風味を持ち、調理性も多様で活用範囲が広い。収穫期が12月から3月と短期間であるが、冷凍保存することによって通年利用できる。この新しい食材は海苔の消費拡大と消費者の健康増進に貢献できるものと考えられる。そこで生海苔の嗜好性と調理性について検討したので報告する。
著者
三堂 徳孝
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.6, pp.49-52, 2013-09-17

(はじめに)海苔は日本人の庶民の味を代表する海産物であるが、1食当たりの摂取量は少量で、更に食習慣の変化により食べる頻度も少なく、近年消費が低迷している。海苔の消費形態は殆んど板状の乾燥海苔であり、海苔製品は、焼き海苔や調味料で加工した味付け海苔、佃煮などで種類に乏しい。食育基本法が平成17年に制定され、地産地消が叫ばれている中、生産地においても新たな海苔製品の開発が求められている。収穫した生の海苔は、乾燥した海苔にはない風味を持ち、調理性も多様で活用範囲が広い。収穫期が12月から3月と短期間であるが、冷凍保存することによって通年利用できる。この新しい食材は海苔の消費拡大と消費者の健康増進に貢献できるものと考えられる。そこで生海苔の嗜好性と調理性について検討したので報告する。
著者
陳 膳盈 大仁田 あずさ 徳井 教孝 三成 由美
出版者
中村学園大学薬膳科学研究所
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.5, pp.29-47, 2012-09-01

(要旨)美容に寄与する日本型薬膳を簡便に提供するために、中医学の基礎理論を基本として、美容・美肌と関わりのある薬膳食材と潤腸通便作用のある食材つまり便秘改善に寄与す薬膳食材について整理したので報告する。薬膳食材の分類は、中医学の基礎理論を基本にして、上海科学技術出版社、「中薬大辞典」使用し、帰経で肝・心・脾・肺・腎より皮膚、毛髪、月経、便秘と関わりのある薬膳食材を選択した。分類は、臨床症状反応による五性の温・熱・涼・寒・平と五味の甘・酸・苦・辛・咸と人体のどこの臓腑に薬効があるのかを示す帰経の肝・心・脾・肺・腎・胆・小腸・大腸・胃・膀胱を行った。その結果、美容に関わりのある薬膳食材は245品であった。五性では平が29.0 %、体を温める温・熱が32.2%、冷やす寒・涼が38.8%であった。五味では甘味が56.7%と高い数値を示し、帰経では高い数値を示した肝が20.4%、脾が19.2%、肺が18.6%であった。次に潤腸通便作用のある薬膳食材は116品であった。五性では体を冷やす寒・涼が42.4%と高い数値を占め、五味のトップでは甘味が56.6%を占め、帰経では表裏関係の脾と胃が41.9%、肺と大腸が29.8%と高い数値であった。中医学の美容薬膳食材は五臓の肝、心、脾、肺、腎に入る食材をバランスよく摂取することで肌を美しく保つことできる。以上の結果より、美容薬膳食材は五性で体を温める、冷やす、平が各約30%を占め、季節の変化に順応することが重要だと考えられた。帰経で高い数値を占めた肝は血流量を調整し、肺は大腸の通暢作用によって維持され、肌・毛髪に関わりがあり、正常であれば、皮膚は光沢を保つと考えられている。潤腸通便薬膳食材は五性で寒・涼性の食材が多く、乾燥しておこる腸燥と関わりが深いと考えられる。これらの薬膳食材を毎日継続持続して摂取することで肌を美しくする効果が期待できると考えられる。
著者
徳井 教孝 三成 由美
出版者
中村学園大学薬膳科学研究所
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-54, 2012-09-01

(要旨)多くの日本人は便秘の症状を有しているが、便秘を定義することはむずかしいとされている。これまで内科学では便秘は週に3回未満の排便と定義されることが多かったが、臨床上、多くの便秘患者は排便頻度が正常であるにもかかわらず、排便時のいきみ、便の硬さ、下腹部膨満感、排便後の残便感などを訴えるため、排便回数だけで便秘を評価するのは不十分であるとされ、2000年に米国消化器学会のコンセンサス会議が開かれ便秘の診断基準が作成された。一方、中医学における便秘の概念は毎日便通がないこと、毎日便通はあるが排便の時間が長い、便の質が硬いなどで、毎日便通があることが基本的に重要であると考えられている。病態的には水分(津液)不足と腸管の蠕動運動減退が関与していると考え、6つの便秘の体質が分類されている。1989年、癌患者のケアーのために便秘の評価尺度が開発された。この尺度は開発後、健常人を対象にした調査でも使用されているが、今後は健常人の便秘の病態を評価できる尺度の開発が望まれる。