著者
楠 喜久枝 三成 由美 杉山 なお子
出版者
中村学園大学
雑誌
中村学園研究紀要 (ISSN:02887312)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.221-229, 1985-03-31

(1)からしめんたいの原料になるスケトウダラは, 魚に雪と書くように, 雪の降る北緯38度線上に生息している。(2)魚卵の種類は, 4段階あり, ガムコ(未熟卵で12〜1月に漁獲されたもの), マコ(成熟卵で2月初旬に漁獲されたもので, 品質が最高のもの), メツケ(成熟卵でマコから1週間たって完然したもの。生の時, 直径1mmの斑点がある), ミズコ(完熟卵で3月下旬の産卵前の魚卵), があり, 価格はマコ1に対し, ガムコ0.4, メツケ0.7, ミズコ0.5の割合である。(3)走査型顕微鏡で魚卵を観察すると, ガムコ, マコ, メツケ, ミズコと粒子の成熟度が顕著にうかがえた。(4)からしめんたいは, 県条例による要許可業種ではないため, 正確な数は把握していないが, 家内工業的な製造店を含めると約100店舗である。からしめんたいは, 漬物等の加工食品扱いのため, 製造年月日, 賞味期間は義務づけられていないため, ほとんとが明記されていないのが現状である。(5)市場調査より, 土産用として価格1, 000円のものが, 正月, 連休, 盆によく売れて, 1, 000円のものについて重量をみると150g〜200gと指があった。魚卵のガムコ(未熟卵), ミズコ(完熟卵), メツケなどが混ぜ合わさっている。(6)実態調査より, イメージは, 博多的, 辛い, 土産品的であった。嗜好的には85%の男性, 女性が好んでいる。(7)嗜好調査では, 有意にマコが, 産地ではホクテン産が好まれた。ごれは, 買付業者の選別, 高級品的魚卵と一致していたが, 有名5店舗の比較では, めんたい好きの男性では, 昔から食べられた老舗のF店、(色調5 RIO/4, 塩分7.8±0.3%)を好み、女性では(色調10R5/5, 塩分8.5±0.1%), 唐辛子をピリッときかせた色をおさえたN店のものを好んでいた。
著者
三成 由美 楠 喜久枝
出版者
中村学園大学
雑誌
中村学園研究紀要 (ISSN:02887312)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.309-316, 1986-03-31

「男の価値は本棚の内容で見分けよ, 女の価値はスパイスの棚の中身でわかる」と西洋の古い言葉にあるように香辛料は料理の味を左右する重要な因子でもあると思われた。香辛料の知名度の高いものはマスタード, ナツメグ, ペッパー, ミント, シナモンの5種類で女子学生の80%に知られていた。香辛料を知る動機づけは家庭, 本, 雑誌, テレビの順であり, 家庭の50%にナツメグ, パプリカ, ジンジャー, オールスパイス, ローリエ, シナモンが, 80%の台所にはマスタード, ペッパー, ガーリック, オニオンが並んでいるのが現状のようであった。香辛料の嗜好性では, ケーキ, クッキー, リンゴジャムに必要不可欠な"シナモン", それにキャンディ, はみがきに重要な"ミンドが好まれていた。香辛料のイメージは3年前の調査で, 女子大学生に空想的でユニークな発想の語句がめだったが, 本調査では料理に用いる香辛料としての役割を的確につかんだ語句が多かった。認識テストでは, シナモン, ジンジャー, ローリエなど日常なじみの深いものが高い正解率を示し, 次に色で見せるパプリカの順であった。重量配合別の嗜好調査の結果, 食物栄養科助手においてハンバーグにナツメグ入りを, トマト・ソースにオレガノ入りを有意に好み, 食物栄養学科学生においては香辛料なしのノーマルな試料を好んだ。カレー・ソースについては食物栄養学科の学生に, 色, 辛み, 総合評価において, 香辛料の種類の多い児童学科の学生は色, 味, 総合評価で, 香辛料の少くないインディアンタイプのカレーを好んだ。以上より食の西欧化が定着しつつある今日, 香辛料を使った木物の味にはまだまだなじみが少いようだった。四季の味を大切にする日本人だからこそ, 旬の物を句の時に料理し, 木物の西洋料理の味を味わいたい時には, 家の空間にでもミント, セージ, など植え, 摘みたてを料理に加えれば一味違った味 を楽しむ事ができるのではないだろうか。私達, 食に接する者は自分の感性を磨き愛情の深 さを香辛料のひとふりにたくしたいものだ。
著者
徳井 教孝 木村 秀樹 嶋川 成浩 三成 由美
出版者
中村学園大学薬膳科学研究所
雑誌
中村学園大学 薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.7, pp.29-33, 2014-09-30

(要旨)漢方治療と腸内細菌叢には密接な関連があり、詳細な腸内細菌叢の科学的分析が可能であれば、腸内細菌叢分析をもとに証の判定が可能となることが期待される。そこで、今回地域住民を対象にした健康調査のデータを用いて、腸内細菌叢をクラスター分析して得られた6つタイプと8つの中医体質(気虚、脾虚、陽虚、血虚、陰虚、気滞、湿熱、血瘀)の関連を検討するパイロット調査を行った。タイプ1では陰虚、湿熱、タイプ2では気虚、脾虚、タイプ4は気虚、脾虚、血虚、気滞、タイプ5は陽虚、血虚、血瘀、タイプ6湿熱との関連性が推測された。タイプ4は特徴的な体質がみられず中医学的には平の体質と考えられた。今回用いた腸内細菌叢分析法と体質評価法は妥当性の問題が残っており、今後さらに精度を上げた分析法、調査法を実施して腸内細菌叢と体質の関連を検討していく必要がある。
著者
三成 由美 濱田 綾子 北原 詩子 入来 寛 御手洗 早也伽 大仁田 あずさ 宮原 葉子 徳井 教孝
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceeding of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.8, pp.43-66, 2016-02-29

【目的】 平成17年に食育基本法が施行され、現在、第2次食育推進基本計画が実施されている。その中で、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針として、生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底と健康を支え守るための社会環境の整備が掲げられている。平成20年よりメタボリックシンドローム関連リスク保有者のコントロール、すなわちハイリスクアプローチに主点を置いた特定健康診査・特定保健指導の制度がスタートしている。この事業に関わる管理栄養士は効果的な食事指導を行い、評価しなければならない。本研究は、対象者の身体状況に配慮しつつ行動変容につながる効果的な保健指導をすることができるように、家庭料理に着目して、食事パターンの構造とその栄養素摂取量について検討した。【方法】 1.基礎データの収集:1999年~2000年に福岡県志免町在住の一般主婦を対象に実施した食事秤量記録調査を基礎データとした。調査は55~65歳の女性48名の四季の各14日間の食事区分、献立名(料理名)、食品名、可食量が記録されたものを使用した。2.解析方法:食事パターンは、主食・主菜・副菜・副々菜・汁物を組み合わせて49パターンに分類し、さらに類似するものを15パターンに整理した。各パターンの栄養素等摂取量はエクセル栄養君Ver.4.5(建帛社)を用いて算出して、料理のデータベース化を行った。栄養素摂取量の評価基準は、日本人の食事摂取基準2005年版を基にして50~69歳 成人期女性{身体活動レベルのレベルⅡ(普通 : 1.75)}とした。解析には、統計解析ソフトExcel 統計2008 for Windowsを使用し、クロス集計にはχ2検定を用い、2群間の平均値の差の検定にはSteeldwassの多重検定を用い、有意水準はp <0.05とした。【結果】 一般の家庭料理で出現する様式は四季共に約60%が和食であり、洋食は約30%であった。家庭料理の全体の80%に寄与する献立は春期と夏期で各14パターン、秋期15パターン、冬期12パターンであり、家庭料理は習慣化された食事パターンであることが示唆された。食事区分別に朝食で寄与率の高いパターンはE1型(主食+副菜+汁物)でPFC 比率が14.0:16.6:69.4であり、基準値に比べて、たんぱく質、脂質、カルシウムそしてビタミン類が不足していた。昼食の22.1%に寄与するL2型(主食兼主菜)はPFC 比率が14.7:26.8:58.5であり、食物繊維とカルシウム、ビタミン類が不足し、食塩摂取量が過剰であった。夕食の14.9%に寄与するB1型(主食+主菜+副菜)は、PFC 比率が18.2:30.6:51.2であり、たんぱく質、脂質、食塩摂取量は過剰であり、食物繊維は基準値を満たしており、カルシウムが不足していた。【結論】 食事調査の調理品を一定基準で分類することにより、食事パターンと栄養素等摂取量の間に関連があることが示唆され、食事区分別の食事パターンの特徴及び不足や過剰となる栄養素等が明らかとなった。特に、「主食、主菜、副菜、副々菜、汁物」が揃った一汁三菜の食事パターンが健康増進に寄与すると考えられているが、本研究結果から「望ましい食事」だとは言い切れないことが示唆された。保健指導において、食事パターンとその栄養素摂取量を図示し、栄養指導媒体を作成し導入することにより、食習慣を変えず、効果の期待出来る栄養指導が可能になると考えられる。
著者
楠 喜久枝 三成 由美 杉山 なお子
出版者
中村学園大学
雑誌
中村学園研究紀要 (ISSN:02887312)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.213-220, 1985-03-31

博多弁で「味があるごつ, なかごつ」といわれながらおきゅうとは, 筑前続風土記によると元文3年 (1738)より食用にされていた。語源は, 沖独活, 沖でとれるウドが訛ったという説, 飢饉の時, 非常食として多くの人を救った事より「救人」という説がある。製造方法は, 原料にエゴノリ:イギス, テングサを7:3又は, 6:4の割合で混ぜて, 熱湯の中に少量の酢を入れ40〜60分煮沸して, ドロドロに溶かす。これを「もじ綱」という麻布地で絞る。このろ液が熱いうちに木板に1枚ずつ流して, 23℃室温10〜15分で固めて仕上げる。 おきゅうとの製造店は戦前からの老舗4軒, 戦後, のれん分はをした6軒を含めると10店舗ある。そのおきゅうとの内容は, 1枚ずつが手作りのため, バラつきがあるが, 1枚39〜40円, 重量41.0±8.0g, 長さ16.8±2.1cm, 幅9.2±0. 4cm, 厚さ3.0±0.3mmであった。おきゅうとの一特性は, 寒天の波形に比べてなたらかな弾性を示しており, 歯もろさ0.72±0. 12, ねばり18. 34 ±1.67a(T U), 腰の強さ16.7±0.07, へたれ0.70±0.06で, これらが特徴あるテクスチャーであると思われた。 おきゅうとの知名度は, 博多の郷土合で2位を占めていた。製造業者が冬季美味しい食品であると言うのに対し, 実態は, 初夏から夏季に食べられており, 朝食につきものの一品であったおきゅうとは, 夕食時に1番多く食べられていた。おきゅうとを食べる理由は, のどごしの清涼感がトップであり, 福岡市内の人のみ, 好きだから, 博多の習慣だからをあげていたが, 他の地区は, 自然食品, 歯ごたえ, 肥満の予防のため, 美容によいからをあげていた。 嗜好調査では, 元来, おきゅうとは細切りして生醤油に薬味は削り節かゴマをかけるのが, 美味しい食べ方と言われていたが, 酢醤油が有意に好まれ, 薬味は男性に生姜が好まれていた。 おきゅうとのイメージは非常に日本的で質素な博多的食品であるととらえていた。 原藻を煮溶かし固めただはの素朴な味こそが, "おきゅうと"の生命であろう。ややもすれは, 見失われがちな食の原点を "おきゅうと"は現代人にひそやかに, 語りかけてくれるようである。 終わりに, テクスチャーについては本学古賀菱子教授に御教示いただき, おきゅうと製造工程では、箱崎の林隆三氏に御協力いただき深謝致します。(本研究は, 第35回日本家政学会年次大会において一部発表)尚この報告は昭和55年度食物栄養学科管理栄養士専攻の井上敬子嬢の卒業研究を一部含むものである。
著者
徳井 教孝 三成 由美
出版者
中村学園大学薬膳科学研究所
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-54, 2012-09-01

(要旨)多くの日本人は便秘の症状を有しているが、便秘を定義することはむずかしいとされている。これまで内科学では便秘は週に3回未満の排便と定義されることが多かったが、臨床上、多くの便秘患者は排便頻度が正常であるにもかかわらず、排便時のいきみ、便の硬さ、下腹部膨満感、排便後の残便感などを訴えるため、排便回数だけで便秘を評価するのは不十分であるとされ、2000年に米国消化器学会のコンセンサス会議が開かれ便秘の診断基準が作成された。一方、中医学における便秘の概念は毎日便通がないこと、毎日便通はあるが排便の時間が長い、便の質が硬いなどで、毎日便通があることが基本的に重要であると考えられている。病態的には水分(津液)不足と腸管の蠕動運動減退が関与していると考え、6つの便秘の体質が分類されている。1989年、癌患者のケアーのために便秘の評価尺度が開発された。この尺度は開発後、健常人を対象にした調査でも使用されているが、今後は健常人の便秘の病態を評価できる尺度の開発が望まれる。
著者
猪田 和代 宮原 葉子 仁後 亮介 吉岡 慶子 山本 亜衣 秋永 優子 楠瀬 千春 末田 和代 三成 由美 松隈 美紀 八尋 美希
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」では、全国に残されている特徴ある家庭料理について、聞き書き調査を通して地域の暮らしの背景とともに記録し、次世代に伝えることを目的としている。本研究では九州支部の調査で得られた家庭料理の中から特に「主菜」の特徴について検討した。<br>【方法】日本調理科学会特別研究の調査ガイドラインに基づき聞き書き調査を行った。調査地区は北九州地域(5名)、筑豊地域(2名)、福岡地域(9名)、筑後地域(9名)の4地域。調査期間は平成24年~25年度。対象者は昭和35年~45年当時の調理担当者とし、平均年齢は74.0±6.1歳であった。<br>【結果】日常の食事は質素で、主菜は野菜の煮物が主であった。朝食は主菜がなく、ご飯とみそ汁に漬物が添えられる程度であった。昼食も特に主菜はなく、残り物や漬物などで済ませていたが、夕食では肉類や魚介類と季節の野菜を煮て主菜とした。食材としては肉類では牛、豚肉はほとんど食べられず、鶏肉もハレの日には鶏一羽をつぶしてご馳走としてふるまうが、少量を味付けに使用していた。また、くじら肉は4地域で食べられ、特に筑豊の産炭地では塩くじらが好まれていた。魚貝類は玄界灘に面した福岡地域では新鮮な魚の煮つけ、塩焼き、県南の筑後地域は有明海の魚介を煮つけ、塩焼きとした。山間部では塩干品を、筑後川中流域では川魚を用いた。さらに、大豆・大豆製品は煮豆、豆腐、油揚が用いられていた。これらの主菜に加え、野菜は季節ごと食され、調理方法は煮物が主であった。特に少量の鶏肉を用い、野菜類と共に油で炒めて煮た「がめ煮」は4地区に共通してみられ、福岡県の歴史や生活の中から産み出された独自の調理法で広く伝承されていた。
著者
陳 膳盈 大仁田 あずさ 徳井 教孝 三成 由美
出版者
中村学園大学薬膳科学研究所
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.5, pp.29-47, 2012-09-01

(要旨)美容に寄与する日本型薬膳を簡便に提供するために、中医学の基礎理論を基本として、美容・美肌と関わりのある薬膳食材と潤腸通便作用のある食材つまり便秘改善に寄与す薬膳食材について整理したので報告する。薬膳食材の分類は、中医学の基礎理論を基本にして、上海科学技術出版社、「中薬大辞典」使用し、帰経で肝・心・脾・肺・腎より皮膚、毛髪、月経、便秘と関わりのある薬膳食材を選択した。分類は、臨床症状反応による五性の温・熱・涼・寒・平と五味の甘・酸・苦・辛・咸と人体のどこの臓腑に薬効があるのかを示す帰経の肝・心・脾・肺・腎・胆・小腸・大腸・胃・膀胱を行った。その結果、美容に関わりのある薬膳食材は245品であった。五性では平が29.0 %、体を温める温・熱が32.2%、冷やす寒・涼が38.8%であった。五味では甘味が56.7%と高い数値を示し、帰経では高い数値を示した肝が20.4%、脾が19.2%、肺が18.6%であった。次に潤腸通便作用のある薬膳食材は116品であった。五性では体を冷やす寒・涼が42.4%と高い数値を占め、五味のトップでは甘味が56.6%を占め、帰経では表裏関係の脾と胃が41.9%、肺と大腸が29.8%と高い数値であった。中医学の美容薬膳食材は五臓の肝、心、脾、肺、腎に入る食材をバランスよく摂取することで肌を美しく保つことできる。以上の結果より、美容薬膳食材は五性で体を温める、冷やす、平が各約30%を占め、季節の変化に順応することが重要だと考えられた。帰経で高い数値を占めた肝は血流量を調整し、肺は大腸の通暢作用によって維持され、肌・毛髪に関わりがあり、正常であれば、皮膚は光沢を保つと考えられている。潤腸通便薬膳食材は五性で寒・涼性の食材が多く、乾燥しておこる腸燥と関わりが深いと考えられる。これらの薬膳食材を毎日継続持続して摂取することで肌を美しくする効果が期待できると考えられる。
著者
古庄 律 石田 裕 鈴野 弘子 齊藤 守史 三成 由美 徳井 教孝 印南 敏
出版者
Japanese Association for Dietary Fiber Research
雑誌
日本食物繊維学会誌 (ISSN:13495437)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.15-22, 2007-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
22

ウチワサボテンの一種であるOpuntia Streptacantha(OpS)より抽出した水溶性食物繊維(SDF)の食後血糖上昇抑制作用を調べるために,II 型糖尿病のモデルであるGKラットを用いてグルコース負荷試験を行った。また,CACO-2細胞を用いたグルコース透過試験を行い,生化学的な評価を行った。その結果,動物実験では2%OpS-SDFを投与した場合,顕著な食後血糖上昇抑制が認められ,いずれの血糖値測定時間においても対照群に比べ血糖値は有意に(P<0.05)低値を示した。CACO-2細胞を用いたグルコース透過試験では,0.1および0.2%OpS-SDF添加で対照に比較してグルコースの透過率は有意に(P<0.01)低下し,GKラットにおける血糖上昇抑制が小腸における糖の吸収阻害であることが推察された。次に,グルコースの拡散阻害への影響を調べたところ,0.2あるいは05%OpS-SDFの拡散阻害率は13.8%および35.8%で顕著なグルコースの拡散阻害が認められた。また,粘度計によりOpS-SDFの濃度の違いによる粘度を測定したところ2%OpS-SDFでは,純水に対して約3,000倍の粘度を示した。 これらの結果から,OpS-SDFの血糖上昇抑制は,OpS-SDFが小腸においてグルコースの拡散速度を低下させたことによるグルコース吸収遅延によるものと推察された。
著者
宮原 葉子 北原 詩子 金子 美帆子 三成 由美 徳井 教孝 印南 敏
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.86, 2010

【目的】管理栄養士が特定健診・特定保健指導で栄養指導をする際には、個々人に対応した献立や調理品を提案し、行動変容につながる継続可能な指導をしなければならない。本研究では、長期食生活調査における食物繊維と食塩に寄与する調理品について検討した。<BR>【方法】1999年~2000年の夏季、冬季の各2週間、福岡県志免町在住の一般主婦28名を対象にした。調査内容は、食事評量記録法を用い、食事区分、献立名、食品名、可食量が記録されたものである。食事記録票の調理品は、三成らが開発した6桁の調理品コードを用いて入力し解析した。食品の栄養価計算はエクセル栄養君Ver.4.5を用いた。<BR>【結果】夏季、冬季の食事記録日数は総計784日、調理品出現回数は11,646回、全調理品数は1,110品であった。食物繊維摂取に寄与する上位2品は2季節ともに1位が味噌汁で夏季8.4%、冬季8.8%、2位が飯で夏季4.2%、冬季4.0%であった。寄与率50%の夏季28品、冬季30品中共通のものは、味噌汁、飯など13品であった。夏季のみ、そうめん、冷やし中華などであり、冬季はみかん、鍋物であった。食塩摂取に寄与する上位1品は2季節ともに1位が味噌汁で夏季8.1%、冬季は8.4%であった。寄与率50%の夏季32品、冬季36品中共通のものは、味噌汁、梅干しなど15品であった。夏季のみ、冷やし中華、冷奴などであり、冬季は漬け物、鍋物であった。<BR>【考察】食物繊維の寄与率の高い調理品は味噌汁、飯などであり、食塩の寄与率の高い調理品も味噌汁であった。飯を美味しく食べることのできる献立の提案、また味噌汁を減塩し、食物繊維を増やす方法の提案が今後の課題であると考えられた。
著者
徳井 教孝 三成 由美
出版者
中村学園大学薬膳科学研究所
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-54, 2012-09-01

(要旨)多くの日本人は便秘の症状を有しているが、便秘を定義することはむずかしいとされている。これまで内科学では便秘は週に3回未満の排便と定義されることが多かったが、臨床上、多くの便秘患者は排便頻度が正常であるにもかかわらず、排便時のいきみ、便の硬さ、下腹部膨満感、排便後の残便感などを訴えるため、排便回数だけで便秘を評価するのは不十分であるとされ、2000年に米国消化器学会のコンセンサス会議が開かれ便秘の診断基準が作成された。一方、中医学における便秘の概念は毎日便通がないこと、毎日便通はあるが排便の時間が長い、便の質が硬いなどで、毎日便通があることが基本的に重要であると考えられている。病態的には水分(津液)不足と腸管の蠕動運動減退が関与していると考え、6つの便秘の体質が分類されている。1989年、癌患者のケアーのために便秘の評価尺度が開発された。この尺度は開発後、健常人を対象にした調査でも使用されているが、今後は健常人の便秘の病態を評価できる尺度の開発が望まれる。
著者
三成 由美 徳井 教孝 内山 文昭 酒見 康廣 大仁田 あずさ 山口 祐美 鶴田 忠良 和才 信子 川口 彰
出版者
中村学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

児童に生きる力を発揮させ、健康管理能力を高める事を目的に、望ましい食習慣と規則正しい排便習慣の形成のための日本型薬膳食育プログラムを開発し評価した。食と健康の意識・実態調査と学校給食にヘルシーメニューを導入することで知識は向上した。さらに、食育CD-ROM、解説書・カレンダーを作成して3ヵ月間、児童に配布し評価すると効果は認められた。これらの教材は学校現場の食育で利用価値が高まると考えられる。
著者
徳井 教孝 南里 宏樹 三成 由美
出版者
産業医科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

植物性蛋白分解酵素パパインの摂取によって、酸化ストレス抑制効果があるかどうかを二重盲検法による介入研究を用いて検討した。対象者は北九州市に在住の老人会に所属する60歳以上の高齢者である。研究内容を説明し47名から承諾を得た。無作為に2群に分け、介入群はパパイン酵素40mgを含むふりかけを1日3回摂取し、非介入群はパパイン酵素を含まず、他の成分は同一のふりかけを1日3回摂取するようお願いした。研究開始前に1名が入院し、研究期間中に3名が中止したため、摂取完了者は43名であった。摂取状況は、1日ごとに対象者が摂取状況を記入した。摂取期間は40日間で、摂取前後で採血、採尿を行った。2群間で酸化ストレスマーカである尿中の8ハイドロキシグアノシン(8-0HdG)をクレアチニン値で除した8-0HdG/クレアチニン値の変化を比較した。介入群の摂取前後の尿中8-0HdG/クレアチニン値は0.056±0.023、0.056±0.026、非介入群は、0.050±0.017、0.052±0.019であった。変化率はそれぞれの群で5.1±24.7%、6.3±6.06%を示し、両群の間で有意な差はみられなかった。消化酵素摂取により酸化ストレス抑制効果は認められなかったが、これまでの研究では2週間の野菜・果物摂取により酸化ストレスマーカが減少することが報告されており、今回の結果がタンパク質の消化による酸化ストレス抑制への影響が小さいのか、抗酸化食物摂取の絶対量が少ないのか、今後検討する必要がある。
著者
三成 由美 徳井 教孝 酒見 康廣 北原 詩子 松田 千照
出版者
中村学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

保育所乳幼児の健康増進及び生活習慣病を予防するための、栄養教育を実現させることを目的に、乳幼児の食生活を明らかにし、また、腸内細菌叢都の関係を検討したので報告する。保育所乳幼児における食育は、保護者と子どもの育ちを共有し、保育所の長所を中心に家庭や地域と連携した食育実践が重要であり、保育所に栄養士の必置義務の導入が望まれる。