- 著者
-
辻本 臣哉
- 出版者
- 日本インベスター・リレーションズ学会
- 雑誌
- インベスター・リレーションズ (ISSN:21850798)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.32-40, 2019-11-30 (Released:2020-07-06)
<論文要旨> 2015 年、世界最大規模の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国連責任投資原則(PRI)に署名したことにより、日本において、にわかにESG 投資が脚光をあびることになった。ESG 投資の具体的な手法として、最も一般的なのは、ESG レーティングである。ESG 情報ベンダーの情報に、独自のリサーチを追加して、自社のレーティングを付与する方法である。ただし、こうしたESG レーティングは、ESG、ファンダメンタルをそれぞれ分離して評価しているため、本当の意味でのESG インテグレーションになっていない。アセットマネージャーが、次のゴールとして設定するのが、本来の意味でのESG とファンダメンタルの統合である。多くのアセットマネージャーは、企業の評価に、3~5 年の収益予想を行っている。この収益予想にESG 情報を直接反映させることが求められる。また、配当割引モデル(DDM)、キャッシュフロー割引モデル(DCF)といったバリュエーションモデルのリスクの計測にもESG 情報を利用することが考えられる。ESG 投資には、まだESG リサーチのレベルアップ等の課題はあるものの、長期投資の手法として広がり、そして一般化されていくと考えられる。とくにエンゲージメントは、企業価値を向上させる可能性を秘めており、日本の株式市場や実体経済に貢献すると考える。