著者
矢澤 憲一
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本を含む31カ国の上場企業12,384の監査報酬を比較分析し、国際的な視点から監査報酬の決定因子に関する理論的および実証的な知見を提供している。分析の結果、第一に、日本の総資産に占める監査報酬の比率(中央値)は31カ国中20位、米国、英国、オーストラリアの4分の1、フランス、ドイツの2分の1であることが観察された。第二に、証券監督が弱い、経営者報酬が低い、ビジネスリスクが小さい国ほど、監査報酬が低いことが観察された。これの結果は、日本企業の監査報酬の決定因子に関する重要な示唆を与えるものである。
著者
金 鉉玉 矢澤 憲一 伊藤 健顕
出版者
日本会計研究学会
雑誌
会計プログレス (ISSN:21896321)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.23, pp.49-67, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
25

本稿では有価証券報告書におけるMD&A・事業等のリスク・対処すべき課題を対象とし,経営者交代が記述情報の変化に与える影響を実証的に分析した。その結果,経営者交代によって記述情報が変化することが明らかになった。具体的に,経営者交代によって記述情報のスティッキネス(過年度の記述情報の再利用度合い)が低下するとともにその可読性が向上すること,さらに記述情報のトーンがポジティブになることが,本稿の分析から示された。このような変化は,有価証券報告書の提出まで十分な時間があり,新任の経営者がその作成手続に実質的な影響を及ぼすことが可能であると考えられる,交代後第2 期目に提出される記述情報において顕著に観察された。さらに,経営者交代による記述情報の変化は新任経営者の属性や記述情報の記載されるセクションによって異なることも明らかにされた。このような本稿の発見は,経営者が有価証券報告書における記述情報を通じて投資家とコミュニケーションを行っていることの証拠といえる。
著者
瀧田 輝己 田口 聡志 太田 康広 福川 裕徳 上枝 正幸 武田 史子 椎葉 淳 矢澤 憲一 奥田 真也 原田 保秀
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、我が国でも重要な課題といえる内部統制報告制度およびその監査制度の意義ないし制度的な効果について、理論研究、規範研究、実証研究、および実験研究という4つの研究方法からアプローチすることを目的とするものである。そして、具体的な検討対象である内部統制監査制度の意義や効果を各方法論から多面的に分析していくだけでなく、各研究方法の根底にある基本的な立場を明らかにし、究極的には、監査研究における各研究方法の相互理解ないしコラボレーションの可能性を模索していくことを目指すものであった。3年間のプロジェクトの結果、多面的な方法論から、ワークショップ開催、学会発表、論文執筆をおこなうことができた。