著者
杉田 由加里 山下 留理子
出版者
千葉大学大学院看護学研究科
雑誌
千葉大学大学院看護学研究科紀要 (ISSN:21859698)
巻号頁・発行日
no.37, pp.47-56, 2015-03

本研究の目的は,特定保健指導の展開過程(保健指導の準備,対象との信頼関係の構築,アセスメント,気づきの促し,対象者の自己の健康行動と科学的根拠のある方法の理解の促進及び教材の選定,目標の設定,継続フォロー,評価)における困難だと感じた状況(以下,課題)と課題への対応方法を明らかにすることである.研究参加者は,自治体5か所,全国健康保険協会3か所,委託業者1か所の9か所に所属する,特定保健指導の熟練者計11人(保健師9人,管理栄養士2人)とした.団体ごとのグループでの半構成的インタビューを実施した(平成25年2~3月).調査内容は先行研究から作成した特定保健指導における課題に対しどのように対応しているか,保健指導の場面を想起し語ってもらった.分析方法は,調査項目ごとに要約を作成し,各要約の同質性を判断しカテゴリとし,対応方法としてまとめた.特定保健指導の展開過程における課題として25項目に整理でき,課題への対応方法として計123項目が明らかとなった.アセスメントにおける多様な課題に対する対応方法を示せたことは,実践において有益であり,活用可能性が高いと考える.保健指導の評価の段階における対応方法に関して全部の種別の団体から抽出することができず,実践されている状況が少ないとも考えられる.保健指導スキルを向上させていくには重要な段階と考えられ,人材育成を充実させていく方向性が示唆された.
著者
杉田 由加里 水野 智子 横山 徹爾
出版者
千葉大学大学院看護学研究科
雑誌
千葉大学大学院看護学研究科紀要 (ISSN:21859698)
巻号頁・発行日
no.38, pp.39-46, 2016-03

自治体にて生活習慣病予防の保健事業を展開する上で,特定健康診査・特定保健指導等のデータ及びレセプト等を分析し課題を抽出し,保健事業を立案,実施,評価し,次年度の事業計画に役立てるといった,PDCAサイクルを確実に回すことが求められている. 本研究の目的は保健事業を展開する上で,データを分析・活用している取組みの基盤となっている体制づくりに関する条件を明らかにすることである. 研究参加者は7市にて,保健事業の実施に1年以上直接関わっており,保健事業の実施に関する体制づくりについて語れる職員(保健師,管理栄養士)1名以上とし,調査は自治体ごとの半構成的インタビューとした. 筆頭著者の所属大学院研究科の倫理審査委員会の承認を受け,文書と口頭により研究の趣旨,匿名性の保持と途中棄権も可能であること等を説明し同意を得た.体制づくりにおける所属内外の条件として以下の点が重要と考えられた.1. 予算の獲得において関係者からの合意を得やすくするために,分析したデータを説明用の資料に活用する.2. データを分析することと,分析したデータを事業へ活用できる体制となるよう,担当部署の連携を意識して体制を構築していく.3. 医療機関との継続的な体制を維持していけるよう,制度開始時だけでなく毎年,医療機関の医師および事務職にも説明し合意形成を図っていく.4. 業務を委託している場合,委託機関の従事者のオーナーシップを引き出せるように,分析したデータの提示により情報の共有を図る. When developing, in districts, health services that are designed to prevent lifestyle-related diseases, it is essential to analyze data and receipts related to specific health checkups and specific health guidance as well as identify problems. It is also necessary to ensure the continuous operation of the plan-do-check-act. This study aimed to clarify the requirements for developing a system that can serve as a foundation for data analysis/utilization initiatives when operating health services PDCA cycle in districts. This study was conducted in seven cities that are implementing the system. In each of these cities, we surveyed 17 different public health nurses and registered dieticians. Semi-structured interviews were carried out in each cities. The study was approved by the ethics board of the institution to which the first author belongs to. The results suggested that the following are important internal and external requirements forsystem building.1 Using the analyzed data when preparing briefing documents to make it easier to gain budget approval from the government2 Building the system in cooperation with relevant sections/departments, so that it enables analysis of the data and their utilization in health services3 Maintaining a sustainable system of collaboration with medical institutions, obtaining agreement by providing explanations to administrative staff and doctors from the relevant institutions not only when the system is launched but every year4 In the case that administrative work is outsourced, we should share information by presenting the analyzed data in order to encourage a sense of ownership among staff working for the outsourcing organizations
著者
正木 治恵 屋久 裕介 渡邉 賢治 屋久 裕介 ヤヒサ ユウスケ Yahisa Yusuke 渡邉 賢治 ワタナベ ケンジ Watanabe Kenji
出版者
千葉大学大学院看護学研究科
雑誌
千葉大学大学院看護学研究科紀要 (ISSN:21859698)
巻号頁・発行日
no.35, pp.31-36, 2013-03

2012年8月30日~10月7日にスペイン・マドリードで開催された世界規模の学生建築コンペティション「ソーラー・デカスロン・ヨーロッパ2012」 に看護学研究科大学院生2名が派遣された.本大会は生活に必要なエネルギーを全て太陽光でまかなう次世代住宅の建築の評価を競うもので,建物の設計・施工・解体,大会期間中の審査対応,協賛企業の募集等すべてを学生主体で行うものである.学生ソーラー建築の「オリンピック」とも呼ばれるもので,本大会は10年ほど前から開催されていたが日本の出場歴はなく,今回千葉大学が日本代表として大会初出場となった.このプロジェクトの中心は工学研究科であるが,千葉大学の総合大学としての特色を活かし,文学部・教育学部・理学研究科・園芸学研究科なども関わっており,看護学研究科は長期に渡る海外滞在中の健康安全管理を担う目的で参加の運びとなった.本報告では看護学研究科大学院生による看護職としての臨床経験を活かした活動や,大会プロジェクト参加から示唆された学際的・国際的活動の意義について報告する.