著者
山口 豊 Yutaka Yamaguchi
出版者
武庫川女子大学大学院文学研究科教育学専攻『教育学研究論集』編集委員会
雑誌
教育学研究論集 (ISSN:21877432)
巻号頁・発行日
no.13, pp.9-16, 2018-03

本研究の目的は,言文一致がまだ行われていない幕末のことばの様相を『海外新聞』という,幕府をはじめ大名などの権力者から制約を受けることがなかった素材を取り上げ,口語文としての兆しがどのような所に,どのような形で現れるのかということについて用例をあげて調査し,言文乖離の状況下で言文一致へと向かう様子について考察することである。そのために,『海外新聞』の持つ意義や作者たちについて触れ,ついで文語文にまぎれた口語文要素を文法面,表記面から総索引を活用して用例を拾い上げた。その結果,文法面では下二段活用の下一段化が,表記面では発音通りの表記が多く見られることを確認した。さらに外国語表記には一定性がなく,聞こえた通りの音をカタカナ表記しており,当時の人々がどのように聞こえていたのかを知る手掛かりとなることを指摘した。