著者
高井 千加
出版者
公益財団法人 ホソカワ粉体工学振興財団
雑誌
ホソカワ粉体工学振興財団年報 (ISSN:21894663)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.58-64, 2023-05-25 (Released:2023-05-25)
参考文献数
15

粉体の機能化を図るうえで,粉体の構造と機能を分類することは重要であり,その方法の一つとして機械学習が用いられる.機械学習を材料設計に応用するためには分類精度向上に寄与する因子の“見える化”が重要と考え,原因分析が可能なマハラノビス-タグチ(MT)法を用いることを試みた.モデル粉体材料としてカブトムシ三齢幼虫が排出する糞を対象とし,雌雄分類精度向上に寄与する糞形状が糞の表面粗さに関係する因子であることを明らかにした.雌の糞に含まれるバインダー量が雄のそれより優位に多いことを考慮すると,腸内でプレス成形された糞が体外に排出される際に,雌の糞は形を崩しやすいのではないかと推測される.MT法は,粒子の構造と機能の分類においても,いわゆる個体差に類似したばらつきを除外し,分類精度向上を目指す手法としての展開が期待できる.
著者
尾関 哲也
出版者
公益財団法人 ホソカワ粉体工学振興財団
雑誌
ホソカワ粉体工学振興財団年報 (ISSN:21894663)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.33-36, 2017 (Released:2018-05-31)
参考文献数
10

これまでに我々は,2液混合型スプレーノズルを用い,医薬品用薬物ナノコンポジット粒子(薬物ナノ粒子がマイクロ粒子に含有されているもの)に関する開発を行ってきた.粒子をナノ化することにより,粒子の比表面積が増大するため,薬物の溶出を改善することができる.また,この2液混合型スプレーノズルを用いることにより,通常は多工程となる機能性粒子の作成をわずか単一工程で作成することができるため,本方法は,生産面・コスト面において有用である.本研究では,2液混合型スプレーノズルの新たな可能性を模索するために,ナノ粒子が凝集して,マイクロ粒子状になったもの(いわゆるナノマトリクス粒子)の調製について,検討を行った.今回は,塩化ナトリウムのナノ結晶粒子が凝集し,マイクロ粒子状になったものを調製したものを紹介する.塩化ナトリウムナノマトリクス粒子は,嚢胞性繊維症を目的としてつくられており,今後の展開が期待できる.
著者
木田 徹也 末廣 智
出版者
公益財団法人 ホソカワ粉体工学振興財団
雑誌
ホソカワ粉体工学振興財団年報 (ISSN:21894663)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.75-80, 2015 (Released:2017-02-03)
参考文献数
17

P型半導体の中でも,銅を含むカルコパライト型の半導体,例えばCuInSe2 and Cu2ZnSnS4は太陽電池材料として大きな注目を集めており,それらをナノサイズ化した半導体ナノ結晶は湿式法で薄膜を作製できる大きなメリットを有する.そこで本研究では,新しい半導体材料として銅-アンチモン-硫黄(CAS)に着目し,CuSbS2,Cu3SbS4 and Cu12Sb4S13といったナノ結晶を合成し,その太陽電池材料としての特性を調べた.高沸点有機溶媒中での金属錯体の熱分解により,上記の半導体ナノ結晶を合成した.各種分析(XRD,UV-Vis-NIR,TEM,光電子分光測定)を行った結果,合成したものは,目的とする組成と結晶構造を有するナノ結晶であることが確認できた.合成したナノ結晶を用いてITO/ZnO/CdS/CuSbS2/Auの構造の太陽電池を作製し,その光応答を調べたところ,CuSbS2については明瞭な光電変換特性を示すことがわかった.一方で,Cu3SbS4 and Cu12Sb4S13は光電変換特性を示さなかった.