著者
袋本 久美子 阿部 晋吾
出版者
『宗教/スピリチュアリティ心理学研究』編集委員会
雑誌
宗教/スピリチュアリティ心理学研究 (ISSN:27581004)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.41-52, 2023 (Released:2023-08-30)

本研究は,個人の祈りの言葉の構造を明らかにし,祈りの言葉の違いが精神的健康にどのような影響を及ぼすか検討するために一連の研究の手始めとして行われた。調査は208名(男性112人,女性94人,無回答2人,平均年齢37.05歳,標準偏差15.12) を対象にweb上で実施された。祈りの言葉をクラスタ分析した結果,合計6つの祈りのタイプ(誓願,請願,取引,感謝、「誓願・感謝」、非該当)に分類された。また,祈りの頻度,祈りのタイプとLOCの相関分析を行ったところ,LOCの内的統制が高いほど祈る頻度も高くなり、誓願の祈りをすることが明らかとなった。祈りのタイプと祈る場面,各場面での具体的な言葉の対応分析を行ったところ,異なる祈りのタイプは場面や祈りで使用される言葉にも異なる傾向が見られることが確認された。
著者
村上 祐介
出版者
『宗教/スピリチュアリティ心理学研究』編集委員会
雑誌
宗教/スピリチュアリティ心理学研究 (ISSN:27581004)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-17, 2023 (Released:2023-08-30)

本研究の目的は,(a)輪廻転生信念と環境配慮行動の関連,および(b)これらの関連を政 府に対する信頼が調整するかどうかを検証することであった。167 名 (Mage = 46.13 歳, SD = 13.66; men = 73, women = 94) の参加者が,インターネット調査で自記式質問紙に 回答した。階層的重回帰分析の結果,政府に対する信頼の調整効果は確認されなかった ものの,輪廻転生信念と環境配慮行動との間には,有意な正の関連が示された (β= 0.15, p ‹ .001,95% CI [0.03, 0.28])。今後の課題として,より精緻化された手法を通じて,環 境配慮行動と輪廻転生信念のような宗教的信念の関連を明らかにする必要性が論じら れた。
著者
藤井 修平
出版者
『宗教/スピリチュアリティ心理学研究』編集委員会
雑誌
宗教/スピリチュアリティ心理学研究 (ISSN:27581004)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.18-32, 2023 (Released:2023-08-30)

宗教心理学の分野は,宗教およびスピリチュアリティに対する関心の高まりを反映し て,近年欧米で発展している。他方で日本においては,宗教という主題を心理学的に扱 った研究はほとんど存在しなかった。本研究では,宗教心理学の文献をレビューし,そ の研究領域,研究テーマおよび課題を明らかにすることを目的にする。宗教心理学は米 国心理学会第 36 部門における研究を中心とするが,それ以外に非実証的な宗教心理学, 禅心理学,宗教認知科学も宗教の心理学的研究とみなせる。宗教心理学の研究テーマに 関しては,社会心理学的研究においては宗教とパーソナリティや向社会性,暴力と偏見 などの他の変数の相関が扱われており,それに加え宗教と健康,宗教と死,宗教と道徳 の関係も探究されている。宗教認知科学は,心の理論,擬人観,素朴二元論といった人 の日常的な認知メカニズムが宗教現象を生み出すとみなしている。宗教心理学の課題 としては,宗教とスピリチュアリティの概念をいかに定義するか,研究者と宗教との関 係性をどのように評価するか,これまで研究対象に含まれていなかった無宗教者をど のように扱うかという 3 つが挙げられる。これらを考慮することで,日本における宗教 心理学の意義もまた大きくなるものと思われる。
著者
Masami TAKAHASHI Edward REMUS
出版者
Editorial Boards of Japanese Journal for the Psychology of Religion and Spirituality
雑誌
宗教/スピリチュアリティ心理学研究 (ISSN:27581004)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.33-40, 2023 (Released:2023-08-30)

Although the number of studies related to the psychology of religion and spirituality has increased dramatically around the world since the late 20th century, there appears to be less enthusiasm for this sub-field among Japanese empirical researchers. One possible reason is the lack of a relatively comprehensive yet convenient Japanese-language research database that can be used to retrieve psychological assessment instruments; such a database is essential to the initial phase of empirical investigation. Here, we introduce four distinct English-language databases relevant to psychological testing and measurement with a particular focus on APA PsycTests, one of the largest and most readily available databases in the U.S. for identifying psychological assessment instruments relevant to the study of religion and spirituality. Although it is a complex database, it is relatively manageable even for non-English-speaking users. By consulting the subject index within APA PsycTests, we created a list of American Psychological Association (APA) “subject headings” related to religion and spirituality that, taken together, yield a total of 1,444 tests within APA PsycTests. We categorized these subject headings according to six meaningful topic areas: General, Beliefs and Denominations, Organizational, Practical/Experiential, Conceptual, and Therapeutic. Instead of the hit-and-miss approach that many scholars often employ when using existing Japanese-language databases, this list of subject headings provides researchers with a clear and comprehensive overview of the topics covered by tests and measurements in the field of the psychology of religion and spirituality