著者
塩出 貴美子
出版者
奈良大学総合研究所
雑誌
総合研究所所報 (ISSN:09192999)
巻号頁・発行日
vol.19号, pp.92-124, 2011-03

筆者は先に奈良絵本の新たな一例として富美文庫所蔵の「ふしみときは」(以下、富美文庫本と称する)を紹介し、その藤園堂本とほぼ同じであること、一方、挿絵は西尾市岩瀬文庫所蔵の奈良絵本(以下、岩瀬文庫本と称する)と最も親近性があることを明らかにした。ただし、その時点では岩瀬文庫本の全容を把握していなかったが、その後の調査により、その図様の淵源は藤園堂本、さらにはサントリー本にまでさかのぼりうるであろうと考えるに至った。それは、つまり富美文庫本の図様の淵源もそこまで遡り得るであろうということである。本稿では、この点を明らかにするために、上記四作品の図様を比較する。また、併せて詞書あるいは本文と絵との関係を検討し、これらを通じて「ふしみときは」における絵巻と奈良絵本の関係を考察することにしたい。

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